平成27年度は,学習者自身の映像を用いた自己評価と,モデル映像と学習者自身の映像を並べて2画面同時に提示するビデオ映像を用いた自己評価を比較することによって,動きや技の改善点や高まりの気づきに違いがみられるのか,その観察対象の違いによる児童の気づきの特徴を明らかにすることを目的とした研究を実施した。 そこで,広島県F小学校の4年1クラスでのマット運動の授業において,観察対象の違う2つの自己評価を実施した。児童に提示した運動材はマット運動の「後転」を取り上げ,まず各グループに1台ずつ配付したタブレット型端末で撮影されたビデオ映像を収集した。次に,もっともよくできたと思う映像を児童に特定させ,技の出来具合について記述させ回収した。さらに,モデル映像と学習者自身の映像を並べて2画面同時に提示するビデオ映像は,学習者自身がもっともよくできたとして特定した映像を,「DARTFISH7.0 connect」のアナライザー機能を用いて,モデル映像と学習者自身の映像が同時に後転を開始するようタイムラインを調整し作成した。 その結果,学習者自身の映像を用いた自己評価では,動きや技の高まりに関する記述が多く,学習者自身が意識的に修正しようしたことや児童が試技を行った際に自分で感じた気づきが記述されやすいことが推察された。2画面比較映像による自己評価では,授業で指導された運動課題についての評価基準をより高く修正したり,自らが意識していなかった改善点を見出したりしやすいが,「体験残像」に基づく気づきが捨象される可能性があることが示唆された。 これらのことから,体育授業では「『出来ているつもり』から『出来ていないことを注視』」させたり,自らが意識していなかった「改善点」を見出させたりするために映像を並べて比較させる2画面比較映像の活用が効果的であると考えられた。
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