研究概要 |
本年度は,まず,体育授業におけるコミュニケーション能力育成のための基礎的知見を得るために,コミュニケーション能力が高いと評価される女子児童(H.S)と,低いと評価される女子児童(L.S)を抽出した上で,この両者の用いるコミュニケーション・チャンネルを量的及び質的に捉えるとともに,その異同を明らかにしようとした。また,体育の授業でしか現れないコミュニケーションの特徴を抽出するために,座学の授業(算数)との比較も行った。その結果,体育授業中(バスケットボール)の発言の総数は,H.Sが226回で,L.Sが105回を示し,2倍以上の差が認められた。一方,算数授業中では,H.Sは51回で,L.Sが55回を示し,両者の差はほとんど認められなかった。体育授業全体では,26項目中H.Sは22で,L.Sは20の項目で出現していた。両者ともに現れた発言の項目は,「喜び」「指示」「返事」等の18であり,両者とも「指示」や「返事」の回数が上位を占めているが,指示の内容は,H.Sがチーム全体へ向けてなされていたものが多かったのに対し,L.Sは特定の仲間へ向けての指示のみであった。一方,算数授業全体では,14項目中H.Sは12,L.Sは10の項目で出現が見られた。すなわち,体育授業の方が多様な発言を生起させることが認められた。また,体育でしか現れないものは,苦しみ,怒り,驚き等の感情を表すものが主であった。発話の際,H.Sは例示子のジェスチャーを,L.Sは適応子のジェスチャーを多く用いていた。また,非言語的コミュニケーション時において,H.Sはうなずきなどの発話調整子,L.Sは手遊び等の適応子の回数が多く認められた。これらの結果は,第39回日本教科教育学会にて発表した。 また,同一児童を対象に,個人種目であるマット運動授業時のデータもとれており,バスケット授業との比較を来年度発表する予定である。
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