研究実績の概要 |
本年度は,スポーツ実践場面におけるコミュニケーションの実態を捉えることに取り組んだ.まず,バスケットボール実践場面におけるコミュニケーション・チャンネルが,経験者だけ,未経験者だけのチームでどのように出現するのか捉えようとした.その結果,経験者は未経験者に比べて,場面に応じた適切な動作で仲間とやり取りができることや,未経験者は,ボール操作の技能が未熟で戦術への理解も低いため,場面に応じた仲間とのやり取りがスムーズでない点等が指摘された. 次に,チーム成員のコミュニケーション能力の違いがバスケットボールのゲームに与える影響を,コミュニケーション能力に違いがあり(高群,中群,低群),バスケットボールのスキル能力が等質な3チームでの総当たり戦の結果から検討しようとした.その結果,話合い活動を挟んだ前半と後半のゲーム様相の変化を検討したところ,高群対低群のゲームにおける高群が6項目(仲間との関わり率,連携シュート率等)で前半よりも向上が認められたのに対して,低群が向上したものはなかった.また,高群対中群のゲームでは,高群が3項目,中群が2項目で,中群対低群のゲームでは,中群が4項目,低群が3項目で前半よりも向上した.すなわち,技能レベルが同じように編成された3つのチームの総当たり戦の結果,コミュニケーション能力の高い者の集まったチームの方が,話合い活動後のゲーム様相は向上する傾向のあることが認められた.そこで,それぞれのチームの話し合い活動の内実を検討した結果,コミュニケーション能力の高い集団の方が,発言内容が具体的である点や他者との関係性の構築がスムーズで,発言に対する反応が豊かである点等が指摘され,話合い後のゲームに影響したことが窺われた. また,これまでの結果を踏まえてコミュニケーション能力育成のための体育授業のモデルを試案した。 さらに,学会での発表と論文での公表も行った。
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