研究課題/領域番号 |
25350730
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
押野 修司 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (80315712)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学校生活の質 / 協調運動能力 / 特別支援教育 / 通級指導教室 / 身体的不器用さ |
研究実績の概要 |
1.介護により27年4月~翌年3月まで新たなデータ収集は実施できなかった。本年度は、特別な教育的支援を必要とする児童の粗大な協調運動能力、全身反応時間と学校生活の質にどのような関連性があるのかを検討し、運動面への支援の可能性を検討する資料とすることを目的に研究を行った。 2.対象は発達障害・情緒障害通級指導教室(以下、通級)に通う12名の児童とした。内訳は男子10名、女子2名、平均年齢は10.2±1.3歳であった。協調運動の評価には、小林-Kipard BCTの運動指数(Total-MQ値)、バランス因子(MQ1値)、力動的エネルギー因子(MQ2値)、スピード因子(MQ3値)を用いた。全身反応時間は、神経系要素(動作開始時間)と筋系要素(動作時間)に分けて分析できるように全身反応測定器と筋電図計測システムを用いて、光刺激による全身反応時間を測定した。学校生活の質は「学校生活の質チェックリスト小学生版(表、2008)」を使用した。 3.対象児全体では「授業は楽しい」、「教師との関係」が通級群で得点が高く特別支援教育の効果が考えられた。協調運動能力別の検討では、「先生はわたしのことをよくわかっている」で協調運動障害の重度な児童で得点が高く、軽度群では得点が低い傾向がみられ、教師の対応が協調運動障害の程度により影響をうけることが考えられた。「友だちに自慢できることがある」、「友達との関係」で、協応性に異常あり群で得点が低い傾向がみられ、自尊感情、対児童との対人関係の低下がうかがわれた。以上のことから、運動困難がみられる児童を支援する際には、運動困難の程度に応じ必要なだけの支援を行ない、児童の自尊感情や自己効力感が低下しないようなかかわりと、他の児童に対し、説明をして理解を得ることが必要ではないかと考えた。期間延長が認められたので、28年度は、協調運動の獲得と学校生活の関係を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度末まで介護による1年間の延長申請を提出し、受理されている。介護の状況が6月中には一段落するので、研究に集中できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、協調運動の状況と児童の学校生活に対する認識、全身反応時間、筋電図による反応開始時間の状況についてデータ収集を終えている。全身反応時間を協調運動の指標とすることで、運動面以外の側面との相関分析が可能となった。 筋電図による反応開始時間の測定において、筋電図解析上の問題点として、反応開始のポイントを特定することの難しさがあった。この点は、新たな測定機器の購入により、フォースプレート(床反力)による測定法に変更することにより改善する予定である。 これまで、運動・行為の指導の際には、運動困難の原因は運動そのものの問題なのか、運動能力以外の影響(認知、心理的要因)の問題なのかを評価することが必要であるが、鑑別が難しいといわれている。行為機能の3つのプロセスモデルによれば「概念化(環境や物とどのようにかかわるか考え)」、「順序立て(身体を介して行動・運動を組み立て)」、「遂行(実際にその行動・運動を実行する)」と分けられるが、遂行を運動とすれば、概念化、順序立ては運動能力以外の認知、心理的プロセスと考えることが可能である。全身反応時間を、神経系要素、筋系要素に分けることによって、運動の問題なのか、運動以外の影響なのかを判断する際の補助的なデータになる可能性がある。 今後の課題としては、全身反応時間、反応開始時間の解析方法の開発を必要としている。筋電データと、床反力データ、動作記録など複数のデータを同期させ、解釈することが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たなデータ収集を行っていないため、謝品としての教材購入を行っていない。また、データ収集の為の国内旅費、検査記録用紙代、筋電図検査用電極、動画記録用のSDカード代を使用していないので請求した。
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次年度使用額の使用計画 |
謝品としての教材購入、データ収集の為の国内旅費、検査記録用紙、筋電図検査用電極、動画記録用のSDカードの購入を計画している。
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