身体運動文化(遊び)の総合性と学習主体を媒介とする活動理論に依拠し、保育実践としての体育の教授―学習活動の組織化に資する基礎的知見の導出を試みた。その結果、以下のような示唆が得られた。 ①「幼児期運動指針」の示す28の基礎的動きのうち、「こぐ」「よける」「引く」「登る」の動きを含んだカリキュラムと環境整備の重要性並びに「幼児期運動指針」の示す28の基礎的動きが実践現場においてはほとんど意識されていない可能性がある(平成25年度)。②保育者は、子どもの発達課題(「自己調整能力」「身体的不器用さ」)をほぼ正確に把握しているものの、それを踏まえた教授―学習活動の組織化は行われていない可能性が高い(平成26年度)。③「投動作のスキル」は、「全身のバランス能力」よりも「手先の器用さ」、「自己主張」よりも「自己抑制」との正の相関が高い傾向がうかがえる(平成26年度)。④身体運動文化(遊び)が、一旦保育園の伝統としてカリキュラムに位置づくと、子どもの主体性が後退した学習を生み出す可能性が極めて高くなり、それを防ぐためには、実践の自由と研究・研修時間の保障が不可避に求められる(平成27年度)。 また、フィールドワークの成果を踏まえ、0歳から2歳までの乳児の身体運動文化(遊び)について、1)室内あそび、2)戸外あそび、3)固定遊具、という3領域を設定し、典型教材(運動あそび)とその指導方法の詳細を提案した。 3年間の、フィールドワークを通して、子どもの発達課題、生活課題を踏まえつつ、身体運動文化(遊び)固有の学習課題を立ち上げることが、研究と実践をつなぐための、必要条件であることが確認できた。今後は、さらに保育実践における体育指導像を帰納的に描き出す方法で新知見の算出を継続し続けることが課題である。
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