本研究において、平成25年度から27年度の3年間を通して、ミニバスケットボール7チーム、ジュニアサッカー5チーム、合計12チームを対象として、小学生ジュニアスポーツの傷害発生実態を明らかにすることを目的として傷害調査を行った。その際に、国際的に標準化されている1000 Athlete-Hours(AHs)当りの傷害発生率(Injury Rate、以下IR)という指標を用いて分析した。また、傷害に関する外的因子および内的因子を抽出するために、各チームの練習状況や試合状況のビデオ撮影を通して観察分析、指導者からの聞き取り調査、および対象者の機能的動作評価やPHV相対年齢等の情報収集を行った。 その結果、ミニバスケットボールチームの全体のIRは、3.83/1000 AHsであり、先行研究の米国高校生チームと同様の数値であった。特に、練習時のIR(PIR)は米国高校生より約1.6~1.7倍高値であったことから、小学生ミニバスケットボール選手の練習環境に重大な問題があると推察された。ジュニアサッカーチームでは、PIRよりGIRの傷害発生率が4.31倍高く、試合時には下肢傷害の発生率が有意に高いことが明らかとなった。また、ミニバスケットボール選手は、ジュニアサッカー選手より練習時および試合時の傷害発生率が高いことも明らかとなった。 平成27年度には、これまでの対象チームから典型的な4チームについて介入研究を行った。介入プログラムは、毎回の練習や試合前のウォーミングアップの中に具体的な傷害予防対策のエクササイズを導入し、年間を通した傷害予防効果について練習時および試合時の1000AHs当たりのIRを用いて検証した。その結果は、対象チームに留まらずジュニアスポーツ全体の傷害予防対策につながる可能性があり、また、ジュニアスポーツの育成ガイドラインを構築することでジュニアスポーツ選手が安心して競技できる環境の提供およびジュニアスポーツのさらなる発展に寄与できると考えられる。
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