研究課題/領域番号 |
25350741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | びわこ学院大学 |
研究代表者 |
奥田 愛子 びわこ学院大学, 教育福祉学部, 准教授 (70556000)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スポーツ原体験 / 個性化 / 語り |
研究概要 |
本研究では、子ども時代の印象的なスポーツ経験(スポーツ原体験)がその後のスポーツに対する価値観や態度にどのような影響を及ぼすのかについて、ナラティブアプローチを用いて明らかにするものである。 本年度は、大学生アスリートを対象として自由記述形式の質問紙調査法よって得られたスポーツ原体験を手がかりに、幼少期のスポーツ経験がその後のスポーツ活動にどのようなつながりあるいは意味づけがなされるのかを、競技レベルでの比較を通してその特徴を検討した。評価観点にしたがって、「事実説明」「体験回想」「行為記述」「評価意味づけ」「説明演説」の5つのタイプに分類された。その結果、各タイプの競技レベルによる分類度数の偏りについては統計的な有意差は認められなかった(χ2=7.884、p>.05)。これは、長期にわたり競技スポーツに関わってきた本対象者のような者たちは、競技レベルの差異をしのぐ共通する部分によるところが大きかったためではないかと考えられた。また各タイプごとの競技レベルでの比較では「体験回想タイプ」、「行為記述タイプ」のいずれも、高競技群の分類度数に高い傾向がみられ、彼らが競技レベルの高いアスリートであるゆえに、彼らのスポーツ原体験が競技成績などの具体的な事実に強く印象づけられたためではないかと考えられた。さらに「評価意味づけタイプ」の分類度数に関しては、高競技群と低競技群の間に有意な傾向が見られた(p<.10 )。ここでの高競技群における「評価意味づけタイプ」の分類度数が低い傾向は、彼らが高い競技成績といった、それまでのスポーツ経験との外的な強いつながりによって内的に支えられていることが考えられた。一方で低競技群における「評価意味づけタイプ」の分類度数の高い傾向は、彼らがスポーツ原体験を始点としたスポーツ経験の連続性を強く自覚していることが、競技継続の支えとなっていることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は一卵性双生児をはじめとした多胎児アスリートの調査面接を行うなど、次年度の研究計画に一部着手している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度実施した調査を引き続き行う。さらに、高強度なスポーツへの関わりをもつ元オリンピック選手や、遺伝子や生育環境が近似する一卵性双生児アスリート等へ対象者の拡大をはかり、同種の調査面接を実施し、スポーツ原体験の影響についてさらに分析・検討を加える。前者では競技スポーツへの高いコミットメントや彼らの個性化との繋がりについて、後者では、語られるスポーツ原体験の内容とその後のスポーツへの関与における双生児間の異同による比較を通して、スポーツ原体験の影響を特定化していく。
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