研究課題/領域番号 |
25350750
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
會田 宏 筑波大学, 体育系, 教授 (90241801)
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研究分担者 |
藤本 元 筑波大学, 体育系, 助教 (30454862)
山田 永子 筑波大学, 体育系, 助教 (80611110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グループ戦術 / 質的研究 / アクティヴ・インタビュー |
研究実績の概要 |
本研究は,卓越した球技選手におけるグループ戦術に関する実践知の構造について明らかにし,運動を構造的に理解する能力が十分に開発されていないジュニア選手におけるグループ戦術力の向上に寄与できる知見を実践現場に提供することを目的としている。 平成26年度は,アクティヴ・インタビューを用いて収集した実践知に関する語りを解釈し,防御におけるグループ戦術に関する実践知の構造化を試みた。対象者は国際レベルで活躍し,防御に関して卓越した技能を持つ元日本代表選手5名(男子3名,女子2名)であった。まず収集された実践知に関する語りを,インタビュー協力者ごとに個別事例としてまとめた。次に,個別事例を共通性と相違性に着目して分析,解釈した。その結果,防御におけるグループ戦術では,攻撃プレーに即興的に対応せざるを得ない状況を排除することが志向されていること,すなわち攻撃プレーの展開に伴い攻撃の可能性や選択肢を小さくさせ,攻撃プレーを限定した上で個人の防御戦術力を発揮しようとしていること,そのために特にオフザボール局面において複数の相手と味方の動きに絶え間なく対応し続ける能力が必要であることが明らかになった。 また,上記の質的研究法と併せて,記述的ゲームパフォーマンス分析を用い,発揮されたグループ戦術力をレベル別に比較したり,グループ戦術力の養成方法を国別に比較したりして,ジュニア選手におけるグループ戦術力を合理的に向上させられる具体的な方法について検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,1.卓越した球技選手が持つグループ戦術に関する実践知を解釈し,構造化すること,2.研究成果を発表することを目標としていた。そこから防御におけるグループ戦術では,攻撃プレーに即興的に対応せざるを得ない状況の排除が志向されていることを明らかにすることができ,学術論文6編(いずれも査読あり,うち英語での発表2編),学会発表10件(うち英語での発表4件)という研究成果から,当初の計画通り研究を進められていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度(最終年度)は,攻撃におけるグループ戦術に関する実践知の解釈と構造化を行う。対象者は,ユース日本代表選手2名(いずれも男子)およびジュニア日本代表選手3名(いずれも女子)である。アクティヴ・インタビューを用いてすでに収集されている攻撃における実践知の語りから,インタビュー協力者ごとに,トランスクリプト(逐語録)を作成し,身体を使って表現された動きを撮影映像からイラスト化する。次に,トランスクリプトを精読し,攻撃におけるグループ戦術に関する語りを抜粋し,語りの内容としてまとめる。さらに,攻撃におけるグループ戦術に関する実践知を個別事例として提示する。最後に,個別事例を解釈する中から「チームや選手が違っても共通すると思われること」選び出し,それらの共通性および特殊性について検討し,個別事例の提示を超えた一般性をもつ理論の構築(構造化)を試みる。 学術的意味を持つ研究成果に関しては,日本体育学会大会,日本スポーツ運動学会などにおいて口頭発表するとともに,原著論文として学術雑誌に投稿する。実践現場に提供できる研究成果に関しては,球技の専門月刊誌に連載する。また,「球技におけるコンビネーションプレーのコツ(グループ戦術に関する実践知の事例集)」を刊行し,選手および指導者が共感・共有できる情報として,おもにジュニア期の選手指導に携わっている指導者に配布する。なお,すべての研究成果はホームページで公開し,他の研究者や実践現場の指導者と意見交換できる環境を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に行う予定であったグループ戦術に関する実践知の収集を,平成25年度に前倒しして実施できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表を充実させるために,海外での研究発表のための旅費として執行する予定である。また,学術雑誌に英文で発表する際の英文校正費用に充てることも予定している。
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