本研究は聴覚障害者の平衡機能の評価方法について検討するとともに、平衡機能の代償として体性感覚入力に着目し、平衡機能改善の運動プログラムの作成とその介入による効果の検証を行うことを目的とした。27年度の計画は、①プログラム修正及び基礎調査の継続、②聴覚障害児に用いるためのプログラム開発検討であった。 基礎調査として当初から行ってきた、平衡機能テスト、運動能力テストについては、27年度も継続して行うことができたので、のべ100件以上の基礎データを蓄積することができた。平衡機能の評価については、閉眼片脚立ちテスト、重心動揺測定を継続して行ってきたが、27年度には、①近年、スポーツ界で注目されているスポーツ脳震盪評価テストとして用いられている「直列立ちテスト」、②平均台を用いた動的な平衡機能評価に関するデータ収集も行った。この平均台を用いた評価は、継ぎ足で接地面積の狭い部分を歩き、方向転換の際に回転、垂直ストレスをかけたテストであるため、動的な平衡機能の測定としては、意味のある測定だと考えている。試行錯誤を繰り返す中で、これらの評価方法の有用性を感じたため、今後の聴覚障害者の平衡機能について研究を進めていきたいと考えている。 また、26年度行った機能改善プログラムを実施した結果については、日本体力医学会にて報告をした。当初はプログラム修正も検討することを計画に入れていたが、聴覚障害児に対して導入するためには、より簡単なプログラムが良いと考え、26年度に使用したプログラムを今後も継続的に用いて研究を進めていくこととする。
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