研究課題/領域番号 |
25350761
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
井上 洋一 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (10193616)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アメリカ保健福祉省 / PCFSN |
研究実績の概要 |
アメリカのスポーツ政策を競技力向上と生涯スポーツの推進及び健康づくりを分類した場合、健康づくりに関する連邦政府レベルの機関は保健福祉省である。同省では、1979年以来、健康増進と疾病予防について10年毎の国民の目標を定めた「ヘルシーピープル」を発表している。現在の「ヘルシーピープル2020」では38のカテゴリーそれぞれにおいて簡明な目標設定がされている。なお、同省は各年代や性別および障害毎に推奨される身体活動に関するガイドライン「国民のための身体活動ガイドライン (2008)」を発表している。行政機関としては、1956年、青少年の体力問題を契機に大統領直轄の行政部門の一つとして「青少年の体力に関する大統領カウンシル(PCPFS)」が創設され、その後スポーツをその対象をひろげ、そしてさらに現在、2010年オバマ大統領によって従来の対象に栄養部門を加えて、「大統領体力スポーツ栄養審議会(PCFSN)」と名称を変更している。その目的は、国民に規則正しい体力づくりとスポーツ活動の重要性を認識させ、プログラム等を提示することにより、その実践を援助することである。具体的な運動・スポーツ参加促進プログラムとしては、例えば、「大統領チャレンジ」や「アクティブ・ライフスタイル・プログラム」などを実施している。これらは、一定レベルの実施基準を満たした者を表彰するシステムになっていて、アクティブ・ライフスタイル・プログラムは、これから運動、スポーツを始めるビギナーを対象にしており、18歳以下の子供は1日に60分、大人は30分の運動・スポーツを最低でも週に5日、6週間続けるプログラムである。さらに、全国規模の体力・運動能力テストとしては、PCFSNの青少年向けの体力テストおよび表彰のプログラム「フィジカル・フィットネス・テスト」、「ヘルス・フィットネス・テスト」がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカのスポーツ政策を検討する場合、競技力向上政策及び生涯スポーツ推進政策、そして健康づくり政策等を考える必要がある。当初の研究計画調書に記したように、25年度は競技力向上政策を支えるアメリカオリンピック委員会(USOC)関連の資料を検討し、法規及びアメリカ的な特徴を分析することができた。 26年度はその一方にある健康づくり政策の中心となる保健福祉省の施策とその中心的な行政機関となっている「大統領体力スポーツ栄養審議会(PCFSN)」の施策を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度以降は、USOCを中心とした競技力向上政策の進展とUSOC内の生涯スポーツ推進施策の位置づけを探ること、また保健福祉省を中心とした健康づくり政策とそのほかの多様な機関との関連性を検討する。さらに、法的観点を基本線に置くことでアメリカ合衆国のスポーツ政策とりわけ競技力向上と生涯スポーツに関わって生じるスポーツ関連の紛争を中心にその制度的側面、具体的内容やその課題について明らかにする。このことは、我が国の今後のスポーツ法や政策そして公正で合理的なスポーツ団体のガバナンスを考えるうえで大きな示唆を与えてくれると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
スポーツ紛争関連の資料として、判例データの入手について十分にできなかったため若干の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記資料の入手について再検討し、経済的かつ合理的な方法で入手することとする。
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