アメリカスポーツ政策を考える場合、その基本となるのは1978年にアマチュア・スポーツ法として成立し、1998年に改正された連邦法規である「テッド・スティーブンス・オリンピック・アマチュアスポーツ法である。その法律によって、アメリカのスポーツ政策の中心的役割を委託されたアメリカオリンピック委員会(USOC)は、一部生涯スポーツの振興を法規上は謳っているものの、国際的な競技力向上を目指した施策を担当している。この基本的な法をもとにUSOC細則のうちに競技者の権利規定を謳っている。 USOC規則のセクション9.1 「競技者の権利」には、USOCのいかなるメンバーも、オリンピック大会、パンアメリカン競技大会、パラリンピック競技大会、世界選手権大会、またはこれらの第1.3節で定義されているような保護された競技に参加するアマチュア選手の機会を否定することまたは脅かすことはできないと規定されている。そして、このことは競技者にだけでなく、そのコーチ、トレーナー、監督、管理者、または他の役人にも同様に適用されるものとするとされる。競技者等の参加する権利を擁護する重要な規定がなされている。 この基本的選手参加の擁護、公正な取り扱いにかかわる規定をめぐる紛争について、直近の5年のケースを見ると、種目では、体操、柔道、トライアスロン、ラグビー、テコンドー、サイクリング、ウォーターポロ、水球、レスリング、陸上競技、射撃、卓球など多岐にわたっているが、その争点はやはり選手選考の基準についてが多く、その他、ドーピングの制裁期間、パラリンピックでの宿舎での待遇などがあげられる。とくに、これら直近の仲裁パネルのケースを見る限り選手側の主張は認められていない傾向にある。
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