ヒトの随意動作遂行時の素早い筋出力調節に関わる中枢制御機構について、発揮張力を指標として実験を行った。特に、素早い出力の減少に着目し、素早い出力増加時と比較検討することを目的とした。 女子大学生10名を被験者とし、座位で両側下肢の等尺性膝関節伸展(120°)動作におる張力発揮を右脚一側条件と左右両側条件で行った。被験者の課題は、最大張力(MVF)の40%の力を保持した状態から、LEDの点灯により呈示される視覚刺激に対して、できるだけ早く2種類の要求水準(20%MVFあるいは60%MVF)に到達することであり、予め要求水準がわかっている単純反応課題とわからない選択反応課題を行った。測定項目は、発揮張力と筋電図(大腿四頭筋および大腿二頭筋より導出)で、張力より正確性および反応時間(調節開始時間:刺激呈示-張力変化開始、調節時間:張力変化開始-張力変化終了、全体調節時間:調節開始時間+調節時間)を求めた。 結果、正確性については、条件、要求水準、課題による違いはみられなかった。また、3種類の反応時間については、調節開始時間が、両要求水準で一側条件が両側条件よりも有意に短く、また単純反応課題が選択反応課題よりも有意に短かった。調節時間および全体調節時間においては、条件、要求水準、課題による差は認められなかった。以上の結果から、両側同時での出力調節においては、力を減少する場合も増加させる場合も、両側同時に行うときに中枢からの運動指令が到達するのに時間がかかることが示された。また、申請者の先行研究での上肢による筋出力調節の結果と比較すると、下肢で行う場合には、一側で行うときに上肢よりも調節時間が長くかかることが明らかとなり、中枢における四肢の筋出力調節時の制御様式についての基礎的データを得ることができた。
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