研究課題/領域番号 |
25350763
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
北脇 知己 関西医科大学, 医学部, 教授 (40362959)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生体計測 / スポーツ科学 / スポーツバイオメカニクス / 運動解析 / 自転車ペダリング |
研究実績の概要 |
本研究では、自転車ペダリング動作に影響を与えている体幹深部筋の活動状態を推定することを研究目的としている。これまでの研究では、計測が容易な表面筋の活動について解析されており、体幹深部筋の筋活動についての報告はほとんどない。そこで本研究では、ペダルクランク回転状態とペダル踏力を計測し、これらの情報から逆動力学シミュレーション計算を行うことによって、自転車ペダリング動作中の体幹深部筋の筋活動を推定し、ペダリング動作の効率に与える体幹深部筋の影響を解析する研究を行う。 平成26年度までの研究で、(1)ペダルクランクの回転状態、(2)下肢筋の表面筋電図、(3)ペダル踏力、ハンドル部、サドル部に加わる応力、の3つの項目を同時計測可能な「自転車ペダリング運動状態測定システム」を開発した。構築した自転車ペダリング運動状態測定システムには、パイオニア製ペダリングモニタ(SGY-PM900H)を用いたペダル踏力測定と同時に、サドル部(シートポスト)にレプトリノ社製6軸力覚センサを組み込み、ハンドルステム部では共和電業社製歪みゲージを用いて計測した応力をロジカルプロダクト社製の歪みゲージ用データロガーに記録する装置構成となっている。これまでにこのシステムを利用し、ペダリング方法の違い(座り漕ぎ、立ち漕ぎ)、ペダル回転数、負荷強度などを変化させた各種条件で、実際に自転車ペダリングデータの収集を行った。 平成27年度は、このシステムを用いて測定した自転車ペダリング動作データから、詳細な逆動力学計算を行うことと、多数の被験者によるペダリング動作データの収集を目標としていた。しかしながら、逆動力学解析モデル計算の問題点の解決に予想以上の時間がかかったこと、また代表者の異動に伴う実験設備の移設による実験システムの再構築が必要になったことなどから進捗が遅れている状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに開発した逆動力学計算を行うためのデータ収集システムは、ペダルクランク部・サドル部・ハンドル部で同時に応力測定が可能なシステムとなっている。このシステムを用いて得られた実際のペダリング動作時の、応力測定値、ペダルクランクの回転状態を用いてペダリング動作に関する逆動力学シミュレーション解析を行った。この解析によって、数値的な結果は得られたものの、筋発揮力の急激な増減が発生していたりして、生体力学的に問題がある結果しか得られなかった。 この原因は、ペダリング動作の逆動力学解析を行うにあたって、下肢動作の自由度が大きいため、複数の筋肉のどの筋肉が実際に力を発揮しているのかを適切に定められていないことが原因と考えられた。特に、膝関節の動きの自由度が大きいため、空間上での軌道に適切な仮定を置いて計算しなければならないことが判明した。このため、逆動力学解析ソフト(AnyBody)の技術スタッフと綿密に連携しながら、ペダリング動作時の解析モデルにおける下肢動作の仮定についてできるだけ問題が発生しないモデルについて検討したが、このモデル構築作業に予定よりも時間がかかった。さらに、代表者の事故による研究の中断などもあり、研究の進捗が遅れてしまった。 そこでこれらの状況を勘案し、今年度(平成27年)が研究の最終年度であったが、来年度(平成28年)への補助事業期間の延長を申請し、承認された。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに「自転車ペダリング運動状態測定システム」を用いて得られたデータを用いて、平成28年度は逆動力学シミュレーション解析によって、生体力学的に妥当な結果が得られるように数値解析を進める予定である。さらに複数の条件での自転車ペダリングデータ収集実験を予定している。この自転車ペダリングデータの収集では、実際の自転車ペダリング動作における、体幹深部筋の効果が明確に現れるように、また下肢筋についても各筋の力発揮状態の違いを解析できるように、ペダル踏力強度やクランク回転数を変化させて実験を行う計画である。 こうして得られた自転車ペダリングデータと逆動力学シミュレーション計算の結果を比較し、体表面で計測した下肢筋群の筋電図変化をリファレンスデータに、逆動力学シミュレーション計算の解析結果の確からしさを検討する予定である。 この結果から、各筋肉の果たす役割を分析すると同時に、体幹深部筋の発揮力についての考察を行う予定をしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
逆動力学シミュレーション解析が順調に進まなかったこと、測定システムを利用した自転車ペダリングデータ収集が遅れたこと、代表者の事故により学会に参加できなかったことなどから、物品費・旅費・謝金の未使用金が発生し、平成27年度の未使用額は 886,966円となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度(平成28年)への補助事業期間の延長が承認されたため、本年度の繰越額は、実験用の消耗品、研究成果発表や研究打ち合わせのための旅費、などとして、来年度に使用する予定である。
|