研究実績の概要 |
本研究では、自転車ペダリング動作に影響を与えている体幹深部筋の活動状態を推定することを研究目的とした。これまでの研究では、計測が容易な表面筋の活動についてのみ解析が行われており、体幹深部筋の筋活動についての報告はなかった。そこで本研究では、ペダルクランク回転状態とペダル踏力を同時に計測し、これらの情報から逆動力学シミュレーション計算を行うことによって、ペダリング動作中の体幹深部筋の活動を推定して、ペダリング動作の効率に与える体幹深部筋の影響を解析する研究を行った。 平成26年度までの研究で、(1)ペダルクランク回転状態、(2)ペダル踏力、ハンドル部、サドル部に加わる応力、(3)下肢筋の表面筋電図、の3つの項目を同時計測可能な「自転車ペダリング運動状態測定システム」を開発した。このシステムでは、モーションキャプチャを用いて体の動きを計測しながら、ペダル踏力・サドル応力をペダリングモニタと6軸力覚センサで測定し、ハンドルステム部の歪みゲージと合わせて、自転車に加える応力を測定する装置構成となっている。このシステムを利用し、ペダリング方法の違い(座り漕ぎ、立ち漕ぎ)、ペダル回転数、負荷強度などを変化させた各種条件で自転車ペダリング時のデータ収集を行った。 平成27,28年度は、このシステムで測定された自転車ペダリング動作データ(ペダリング時の体の動きと自転車にかかる応力)から詳細な逆動力学計算を行った。このとき、逆動力学解析モデルで股関節の大臀筋のように筋肉が巻きつくような動きをする場合を正確に取り扱うことで、正しい結果が得られることがわかった。この問題点を解決したことで、自転車ペダリング運動状態測定システムで計測した下肢筋の表面筋電図と逆動力学計算で計算された表面筋の活動状態が一致する計算結果が得られ、計算された体幹深部筋の働きが正しいことを確認することができた。
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