研究課題/領域番号 |
25350768
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
竹下 俊一 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (40258918)
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研究分担者 |
山崎 利夫 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (60239944)
前田 博子 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (30253925)
隅野 美砂輝 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (60363652)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済不況下 / ゴルフ場 / 経営戦略 / 価格競争 / 鹿児島県 |
研究概要 |
本研究の目的は,昨今の経済不況の中,生涯スポーツの一施設であるゴルフ場がどのように生き残っていくかについて,行動経済学やゲーム理論・経済実験の手法を用いて解明することである.経済実験に先立ちゴルフ場の経営実態を把握するため,本研究では,昨今の長期にわたる経済不況下のゴルフ場の料金設定に注目し,鹿児島県のゴルフ場の料金設定や今後の利用者増への取組みについての実態調査を行った.その結果,1)ゴルフ場の年間利用者数はおよそ平均3万人であった.2)ゴルフ場セミナーによると,平成24年平日セルフは平均8,462円で鹿児島県と全国を比べると,およそ2,000円差があり,土日・祝日になると12,800円で鹿児島県によると4,000円弱違うことがわかった.鹿児島県は全国と比べてセルフ料金が低かった.3)料金設定については,「集客を考えて・お得感も考えて」料金を決定しているゴルフ場が多いことがわかった.同時に「コスト分岐点から」参考にしているゴルフ場も多いことを示した.4)料金の設定で,周辺のゴルフ場を参考にするゴルフ場が多く,低価格競争の傾向を示していた.5)集客を考え値引き,割引が頻繁に行われていた.また,基本料金も値引き,割引をふまえた料金設定になっていることがわかった. 鹿児島県のゴルフ場では,バブル経済崩壊以降の不況で物や既存サービスの需要が変化し,このデフレ状態に大幅な値下げを行う動きにつながっていることがわかった.しかし,安易にこのような値下げ合戦の動きに追随しても利益を出すこともできずに業績をさらに悪化させてしまっている状況がみられた.ゴルフ場は,値引き競争を行ってゴルフ場自らの経営を圧迫しているゲーム理論で言う社会的ジレンマ状況が確認された.また市場開拓の戦略としてゴルフ場ではさまざまなものがみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究計画では,(1)ゴルフ場の値下げ競争にゲーム理論を使った分析(経営者間のゲーム)(2)ゴルフ場の値下げ競争をシミュレーションしたパソコン実験(経営者-顧客間のゲーム)であったが,(1)について,ゴルフ場が値引き競争を行ってゴルフ場自らの経営を圧迫しているゲーム理論で言う社会的ジレンマ状況が確認され,それらをゲーム理論を使って分析している.26年度中には分析結果をまとめて論文投稿する予定である.従って(1)は概ね達成できたと思われる.(2)に関して,不況下でゴルフ場の値下げ競争を再現するゲームソフトを作成し,被験者にパソコン上で施行させる実験を計画していた.しかし,ゴルフ場の産業構造は小規模な多数のゴルフ場企業からなる競争的市場であり,そこからくる価格競争を扱ったゲームのモデルづくりに難航している.その理由は以下のとおりである.低価格競争といったジレンマを抑えるためには,カルテルやシンジケートといった独占禁止法に抵触する方法以外,ゴルフ場間の協力が必要である.各県ゴルフ協会ないしは支配人会が存在し,企業としてのコンプライアンス,仲間意識,相互のコミュニケーション,情報の開示といった企業間の協力を促進する要因は見られる.一方で低価格競争に見られる非協力的行動を促進する要因,例えば罰則規定が無いこと,企業数が多く匿名性が高いといった社会的ジレンマの回避システムのゲームつくりが難しいことがあげられた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の計画の(2)に関して,不況下でゴルフ場の値下げ競争を再現するゲームソフトを作成し,被験者にパソコン上で施行させる実験を計画していた.しかし,ゴルフ場の産業構造は小規模な多数のゴルフ場企業からなる競争的市場であり,そこからくる価格競争を扱ったゲームのモデルづくりに難航している.その理由は,低価格競争といったジレンマを抑えるための協力が必要であるが,各県ゴルフ協会ないしは支配人会が存在し,企業としてのコンプライアンス,仲間意識,相互のコミュニケーション,情報の開示といった企業間の協力を促進する要因と,一方で低価格競争に見られる非協力的行動を促進する要因である罰則規定が無いこと,企業数が多く匿名性が高いことの両面を加味した社会的ジレンマの回避システムのゲームつくりが必用である.そのため,再度先行研究の検討,他の研究者・識者の助言をえること,また簡単な予備実験からデータを蓄積することを実行する.また平成26年度の計画である「ゴルフ場の値下げ競争をシミュレーションした教室実験(経営者間+経営者・顧客間のゲーム)」の準備を進める.そのためには平成25年度の(1)の経営者利得結果と(2)パソコン実験による均衡価格のデータを基に,実験室に小集団(複数のゴルフ場経営者/複数の顧客を構成メンバーとする)による市場を再現し,経済理論やゲーム理論に基づく予測が実際の人間の行動と一致するかを調べる予定である.
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