本年度は脊髄損傷者の快適な運動環境について検討するため、腕および脚エルゴメータ運動時の主観的温度感覚、運動強度を着衣の量を変えて測定した。被験者は腕および脚の運動が可能な健常者とした。実験のプロトコルは腕、脚運動条件とも運動開始前に15分の安静時データを測定し、その後4分毎、脚運動条件では40Wから30Wずつ180Wまでステップ負荷を実施し、腕条件では同様に20Wから15Wずつ95Wまで負荷を上げ、最大で5ステージ、24分間の運動を行った。また運動終了後30分間、回復期のデータを取得した。着衣は半袖短パン(半半)と長袖長ズボン(長長)の2種類で行った。上述の測定時間において呼気ガス、心拍数、8か所の皮膚温(前額、胸部、背部、前腕、上腕、腹部、大腿、下腿)を測定した。各負荷ステージの最後の1分に、温度感覚、主観的運動強度(全身・腕or脚・呼吸循環系)を被験者に口頭で申告させた。運動は疲労困憊での途中終了可能とした。 予備実験で先行研究を参考に設定した負荷では腕運動が継続できないと判断し、負荷を低めに調整したが、ほとんどの被験者が最終負荷ステージの途中で終了となった。本実験の条件では温度感覚は腕、脚条件と着衣の影響はほとんど見られなかった。主観的運動強度は同じ運動条件では着衣の影響は温度感覚同様見られなかったが、全身、呼吸循環系に比べ、腕の主観的運動強度は高い傾向が見られた。 今回は人工気候室を使うことができなかったため、着衣を変えて同じ運動を課した際の主観的運動強度を見たが影響はみられず、この条件が効果的ではなかった可能性も考えられる。今後は環境温度を変えて検討する必要があるだろう。
|