研究課題/領域番号 |
25350776
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
渋谷 賢 杏林大学, 医学部, 助教 (30406996)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 身体所有感 / 運動主体感 / 仮想現実 / 身体錯覚 / 多感覚統合 / 身体表象 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,2種類の実験を実施した.一つは,平成26年度に開発した仮想現実システム(マニピュランダム)を用いて行った.マニピュランダムを右手で操作し,左側に呈示されるオブジェクト(仮想手・矢印)の像の前後運動を60秒間行った.右手の前後方向の動きのみがオブジェクトに反映され,左右方向は固定された.本研究では,操作するオブジェクトの角度が運動中の左右方向のドリフト運動に与える影響を検討した.いずれのオブジェクトも,その角度がドリフト運動に影響を与えたが,左向きの時にそのドリフトの大きさは仮想手の方が矢印よりも大きかった.生体力学的な制約を受けにくい仮想手が矢印よりも身体表象のプロセスを強く変調したと思われる.この成果は,日本認知科学学会等で発表した. 他の一つの研究では,ミラーによりラバーハンドを実際の左手の空間位置と一致させ,手関節角度のみ背屈方向へバイアスを加えた.左手関節屈伸運動と連動するラバーハンドの操作により錯覚を誘発した.誘発時のラバーハンドの方向(一致・不一致)と運動様式(能動・受動運動)を操作した.質問紙評価は,ラバーハンドへの身体所有感と運動主体感の二重乖離を示した.錯覚の影響のない右手を用いて影響を受けた左手の手関節角度を評価した場合(RL),固有感覚ドリフトは観察されたが,ラバーハンドの方向の効果は無かった.他方,左手による右手の関節角度の評価では(LR),固有感覚ドリフトが不一致条件で顕著に観察された.運動様式の効果はLRでのみ認められ,能動運動はドリフト量を低下させた.本結果は,ラバーハンドと実際の手が近接する場合,ラバーハンドの身体化が視覚入力と固有感覚入力の矛盾に伴う固有感覚ドリフトを抑制する方向に働く可能性を示唆している.この成果は基礎心理学会等で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までに開発した装置を用いて,身体意識(運動主体感・身体所有感)および身体表象に関する知見が得られているため.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,視触覚および視覚運動の同期性に基づくラバーハンド錯覚中の脳波測定,没入型仮想現実システムを用いた身体意識および身体表象の変化,ラバーハンド錯覚中の時間知覚の変化等を検討していく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会への参加を行わなかったため.
|
次年度使用額の使用計画 |
国際学会への旅費,論文校正費等に用いる予定である.
|