平成27年度は、1認知・予測能力と捕捉能力評価の関係、2失敗要因、3認知・予測能力における加齢の影響について検討した。 タスクでは、仮想環境において水平移動する物体を再現した。予測能力の評価タスクでは、物体が移動途中で遮蔽板の後方を移動し見えなくなる。遮蔽後、視覚刺激(遮蔽板の変色)を提示し、その時の位置を回答させた(統制条件)。また、同じタスクにおいて遮蔽板の上部と下部にストライプフローを提示し、外乱を与えつつ位置を回答させた(フロー条件)。認知能力の評価タスクは、物体が遮蔽板の前面を移動する際に視覚刺激を提示し、その時の位置を回答させた(可視条件)。各タスクによって得られた予測位置と認知位置の結果から各被験者の遮蔽後の物体運動速度(予測速度)と可視物体の運動速度(認知速度)を計算し、予測能力と認知能力を評価した。 捕捉能力の評価タスクでは、昨年同様垂直落下ボールの捕捉タスクを実施した。これらの捕捉成功率と認知・予測速度との間に特筆すべき関係性は見いだせなかった。 予測タスクの際、指またはマウスの追尾動作によりフィードバックを行い、位置予測する実験を実施した。結果は、統制条件フロー条件とほぼ同様の速度であった。運動物体の脳内イメージを具現化する指やマウスの動き自体が実速度より低下しているため、予測処理プロセスにおいてエラーが生じている可能性が示唆された。これが失敗の要因の一部である可能性が考えられる。 60才以上の成人を対象に認知課題と予測課題を実施した。予測速度は、実速度に対して若年者39.1%、高齢者44.7%であった。また認知速度は、実速度に対して若年者92.4%、高齢者82.7%であった(p<0.05)。これは加齢に伴い実際の運動物体速度を遅く認知すること示唆し、加齢の影響を実験的に証明するものである。したがって加齢は予測機能よりも視覚認知機能に大きく影響することが示唆された。
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