| 研究実績の概要 |
本研究の目的は，対象物への注意配分により大幅に変化する運動認知・予測特性を考慮した視覚トレーニングの開発である．それにより，視覚トレーニング効果の飛躍的な向上を目指している．報告者は，今まで，眼前の狭い視野内で実験を行ってきた．しかし，その視野範囲はスポーツで必要な視野の一部分に過ぎず，視覚トレーニングの効果を期待するには不十分である．本研究期間内で，有効視野内・現実環境・有効視野外・自己運動の4点の運動認知・予測特性の検討を行う計画を立てている．そして，視覚トレーニングの開発につなげる計画である．
平成27年度は，有効視野内における物体の運動予測特性解明に向けて，物体への指差し動作によるフィードバックを行い，移動距離の予測錯覚への影響を調査する実験を行った．実験の結果，フィードバックを加えても，移動距離の予測は，実移動距離の有意差は認められず，大幅な移動距離の予測錯覚が認められた(p<0.01)．この結果より，移動距離の予測錯覚は，指差し運動の身体制御プログラム作成以前の情報処理で生じている可能性が示唆され，日本体育学会第66回大会にて発表を行った．そして，現実環境で錯覚が起こっている可能性の検討を，ゴルフパッティングの距離感とボールへの注意配分の関係により行った．ボールへの注意配分を減少させるために，６桁の数字を記憶させた実験の結果，統制条件と比較して有意に減少(p=0.017,n=4)し，ゴルフパッティングの距離感が，ボールへの注意配分減少によって変化する可能性が示唆され，日本ゴルフ学会第28回学会大会にて発表を行った．
また，関東大学テニス研究会，大学スキー研究会，スノーボード研究会などの参加し，他の研究者とのディスカッションや予備実験などにより，現実環境および有効視野外の実験方法について有効な情報を得ることが出来た．今後はさらなる検討を進めたい．
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