本研究は、二つの独自な伝統文化圏の身体技法を抽出し、グローバル化がもたらす文化変容と多様な身体・スポーツ文化の表象特性を探ることであった。 研究代表者は、平成25年度から北米太平洋岸地区ワシントン州ピュージェット湾岸におけるセイリッシ語族の身体技法を継承する「癒しのカヌー・ジァーニ(人材育成イベント)」の表象機能を調査し、グローバル・テクノロジー社会の進展による基層文化の変容(リニューアル化を含む)を国内外の関連学会で報告してきた。平成27年度は、北米ネイティブ・スピリットを描写する<レッドスキンズ>ロゴのスポーツ使用は「人種差別/偏見か、名誉か」の論争を調査するため、87年間にわたるロゴ使用の歴史をもつ、州立ポートタウンゼン高校の選手、卒業生及びコミュニティ支援者を巻き込む6ヶ月間(175時間)の論争資料を調査し、同校が「レッドスキンズからの撤退」を決断した背景を検証した。ロゴモチーフとスポーツ文化の表象力について国際学会で報告する予定である。 研究分担者は、テヘランにある4か所のズールハーネ及びナショナル選手を育成する国立ズールハーネセンターやイラン・ズールハーネ連盟を訪問し、現代的課題や国際大会を志向した選手養成指針について運営担当者からの聞き取り調査を実施した。平成25年度から27年度において実施した現地調査の結果をまとめ、日本スポーツ人類学会第17回大会において口頭発表を行った(演題:「ズールハーネ」の精神性と現代的潮流~文化表象としての身体技法)。また、昨年度に引き続き、イラン・オリンピック委員会を訪問しイスラーム女性スポーツ大会運営に携わったスタッフと初めて面談することができたが、主催者との面談や詳細な資料等の提供は先方の意向で来年度以降に持ち越された。しかし、本研究期間において今後の研究課題が新たに準備され発展的な研究成果への基盤を整えられたと考えている。
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