本研究は、近世後期における東北地方からの伊勢参宮の旅に着目し、当該地域の庶民男女が旅の道中で歩いた距離の傾向を明らかにしようとするものであった。基本史料として用いたのは、庶民が伊勢参宮の旅の道中で認めた記録(旅日記)である。 検討の結果、東北地方の庶民男女が歩いた伊勢参宮ルートが「近畿周回型」「四国延長型」「富士登山セット型」の3つに類型化できることがわかった。また、彼らの1日あたりの歩行距離の平均値は全体(男女)では 約34.1㎞で、これを男女別にみると庶民男性が約34.9㎞、庶民女性が約28.6㎞であることが明らかとなった。
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