研究課題/領域番号 |
25350790
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大石 純子 筑波大学, 体育系, 准教授 (50410163)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 倭劒 / 朝鮮文献 |
研究概要 |
韓国伝統武藝の基本的文献として『武藝圖譜通志』(1790年刊)、『武藝諸譜飜譯續集』(1610年刊)、『武藝諸譜』(1598年)があるが、それらの中に刀剣に関する技法が掲載され、日本剣術との関連が確認されている。中でも『武藝圖譜通志』や『武藝諸譜飜譯續集』に登場する「倭劒譜」という刀剣技法は、日本の剣術技法が伝播受容された具体的事例として注目に値する。本研究課題は、そういった朝鮮武芸書をはじめ、その他の朝鮮李朝期文献に散在する名辞「倭劒」を抽出解釈し、その意味内容を整理することを通して、朝鮮李朝社会における「倭劒」の意義を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するにあたり、平成25年度においては、以下のように研究を進めた。 まず、7月には、「倭劒」に関するこれまでの研究成果の一端を、海外において発表した。この発表は、「剣道の国際化ー東アジアの事情」と題した武道文化講演(第21回国際ハンガリー剣道杯セミナー、2013年7月、ハンガリーブダペスト)でなされ、朝鮮武芸書やその他の朝鮮文献の中に「倭劒」という用語が登場している状況について解説した。 また、9月に開催された日本武道学会第46回大会では、『武藝諸譜飜譯續集』にみられる用語「倭劒」が、先立って刊行された『武藝諸譜』、さらに遡って刊行された『紀效新書』から継承されてきた用語ではないことを踏まえ、その用語の由来について検討することを課題とした。そして、朝鮮李朝期(1392年~1910年)の編年体記録である『朝鮮王朝實録』のなかに「倭劒」の用語を探っていった。加えて、朝鮮李朝期以前の文献『高麗史』の中にみられる用語「倭劒」の用例も取り上げて考察した。これらを通して、用語「倭劒」をめぐる周辺事項について、その一端を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題において名辞「倭劒」について考察するにあたり、すべての朝鮮李朝期の文献史料からその用例を網羅的に抽出し分析していくことは不可能である。そこで、まずは韓国において韓国学基礎資料整理事業の一環として(財)民族文化推進會が編修事業を行った民族文化推進委員会編『韓国文集叢刊』景仁文化社に所収されている史料から名辞「倭劒」の抽出をおこない、それを整理し、解釈及び考察を進めていくことを当初の目的とした。 平成25年度には、当初の予定通り、『韓国文集叢刊 解題』1巻から10巻の購入した。しかし、『韓国文集叢刊』の各巻については、こちらの欲しい巻のみの購入がかなわなかったこと、書籍購入に時間がかかったことなど、予定通りの時期に、予定の巻数をそろえることができなかった。 加えて、平成25年度途中で他大学への異動があり、研究課題の推進に若干の遅延が生じることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度及び平成27年度の研究計画として、平成25年度予算にて購入できた『韓国文集叢刊』55巻における「李忠武公全書」における「倭劒」について」研究を進める。 また、『韓国文集叢刊』214巻から260巻の計20巻を購入し、その中で特に興味深い「倭劒」に関する用語のみられる『自著』、『凌虚關漫稿』、『靑莊館全書』に焦点を当てつつ、研究を推進していきたい。 さらに、国立国会図書館のアジア情報室を利用して、ハングルにて記述された「倭劒」に関する先行研究について、いっそうの収集に努め、その解読を進め、研究史を整理する。この作業は、韓国における「倭劒」研究の動向を把握することにつながるとともに、日本からの「倭劒」アプローチの方向性を明らかしていくための一助になる。 我が国の武道文化・武芸文化は国際的に注目を集めていると同時に、それをグローバルな視点からとらえなおすことも求められている。「倭劒」研究に焦点を当てつつ、韓国武芸の史料・資料を日本語において解説しながら整理しておくことは、我が国の武道文化を国際的視野からとらえなおし行くための貴重な資料になりうる。
|