研究課題/領域番号 |
25350799
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本体育大学女子短期大学部 |
研究代表者 |
亀山 有希 日本体育大学女子短期大学部, その他部局等, 准教授 (00413104)
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研究分担者 |
関 芽 日本体育大学, その他部局等, 助教 (10468150)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 地域再生 / 民俗芸能 / 郷土芸能 / 獅子風流 / 伝統行事 / スポーツ社会学 |
研究概要 |
東日本大震災で直接的な被害を受けた三陸海岸はリアス式海岸と呼ばれ、自然と地形を活かした沿岸漁業や養殖業、漁業などが中心として営まれてきた。各浜にはその浜独自の郷土芸能や民俗舞踊、太鼓が継承されている。例えば石巻市大浜地区では毎年正月、神社に氏子が集まって参拝し『獅子振り(獅子舞)』で地区の家々を回って悪魔を払う「春祈祷」が行われてきた。大津波で地域は壊滅したが「獅子頭を造り直し春祈祷を再開することで郷土芸能を継承し、住民の"心の中の大浜"をつないでコミュニティー維持し、地域の復興再生の大きな力にしていきたい」と震災後も郷土芸能活動を通じた地域復興活動に取り組んでいる。 震災発生後、こうした郷土芸能活動はそれぞれの発祥の地で追悼と復興祈願として多数報告されている。本研究では宮城県石巻地方を中心に郷土芸能の震災後の実態を明らかにする。また、震災前の獅子風流(シシフリ)の取り組みを整理するとともに、震災後、被災地の人びとが自らの力で獅子風流を計画し活動する姿をどのようにして取り戻していくのかを生活実態や復興過程を柱にしながらその変遷を明らかにすることを目的とする。 これらを検証するために、初年度は1)東日本大震災の被害状況および復興状況の整理、2)調査対象地域の概要調査、3)石巻地方郷土芸能の活動実態調査、4)「獅子風流」のフィールドワークに取り組んだ。 平成24年度の研究成果では郷土芸能(獅子風流)の復活の経緯には「地域に戻ることができる」といった状況から獅子風流が元の場に復活する事例、鎮魂や復興祈願といった「場」で復活する事例、NPOを初めとするボランティア団体や基金などが投じられて復活する事例、地域が消失し、再建のめどが立たずに獅子風流の復活がまだみられない事例、もとの地域から仮設住宅へと避難生活を余儀なくされるもその地で獅子風流等の神事が執り行われる事例等が散見された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を検証するために、初年度は1)東日本大震災の被害状況および復興状況の整理、2)調査対象地域の概要調査、3)石巻地方郷土芸能の活動実態調査、4)「獅子風流」のフィールドワークに取り組んだ。 1)東日本大震災の被害状況および復興状況の整理では、東日本大震災の被害状況および復興状況については、対象を3区分し、1)日本全域 2)宮城県 3)石巻地方について公的機関が発表している基礎データに基づいて、災害の規模や被害状況を整理し、復興庁等の算出データ、開示データも参考にしながら復旧・復興活動がどの程度進められているのか、復興計画も重ね合わせながら時系列を柱に検証を行った。また、2)調査対象地域の概要調査では、宮城県石巻地方の概要(地域性・風土・自然・文化・産業・人口推移など)について、公的な機関が公表しているデータを参考に震災前の2010年度から2011年、2012年、2013年の4年間の推移の変化を縦断的に収集するには至ったが、震災によって何がどのように「地域」が変容したか(またはしていないか)についての見解を示すまでには至らず継続的な課題となった。3)石巻地方に伝わる郷土芸能の活動実態調査では、全日本郷土芸能協会データを参考に、石巻地方に伝わる郷土芸能の数や衰退、再生状況の確認を行った。東京文化財研究所(文化庁文化芸能振興費補助金による)では被災文化財の調査資料を公開しており、これらのデータを参考に宮城県の民俗芸能の被災・支援・復興状況について広域の情報収集・整理に着手することができた。以上を踏まえ、獅子風流の復活においては復興状況(課題)の違いが何らかの影響を及ぼすのではないかとの仮説が立てられたことから、4)石巻地方の「獅子風流」については、特定の獅子風流・復活の有無に留まらず広域に渡って聞き取り調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、1)東日本大震災の被害状況および復興状況の整理、2)調査対象地域の概要(地域性・風土・自然・文化・産業・人口推移など)調査、3)石巻地方に伝わる郷土芸能の活動実態調査を継続的に行うものとする。 また、上記に加えて研究計画の段階では4)石巻地方渡波地区「渡波獅子風流(ワタノハシシフリ)」フィールドワークを計画していた。これは渡波地区「渡波獅子風流(ワタノハシシフリ)」の歴史について整理するとともに(人々の暮らしと渡波獅子風流)、震災前の2010年度から2011年、2012年、2013年(4年間)の「渡波獅子風流(ワタノハシシフリ)」の取り組みについて明らかにすることを目的とし、2014年は1年間の活動に同行しながら、「活動目的・活動場所・支援の有無・参加者・活動内容・運営など」の記録化を試みようとするものであった。 しかしながら、平成24年度の研究成果では、震災被害状況や復興状況の分析から獅子風流の復活においては復興状況(課題)の違いが何らかの影響を及ぼすのではないかとの仮説が立てられたことから、石巻地方の「獅子風流」においては特定の獅子風流・復活の有無に留まらず広域に渡って聞き取り調査を行った。 郷土芸能(獅子風流)の復活の経緯には「地域に戻ることができる」といった状況から獅子風流が元の場に復活する事例、鎮魂や復興祈願といった「場」で復活する事例、保存会として活動する事例、NPOを初めとするボランティア団体や基金などが投じられて復活する事例、地域が消失し、再建のめどが立たずに獅子風流の復活がまだみられない事例、もとの地域から仮設住宅へと避難生活を余儀なくされるもその地で獅子風流等の神事が執り行われる事例等が散見されたため、継続して特定の獅子風流・復活の有無に留まらず広域に渡って聞き取り調査を行いその変遷を追うものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、東日本大震災で傷ついた人々、地域、日常に迫ることを前提としていることから、諸事情によっては調査対象者から調査協力が中断する、継続できないといった状況も十分想定された。その場合は、被災地の状況を優先的に配慮し、すみやかに調査研究の方法を再検討するとともに、変更することも検討課題とした。また、研究活動と同時に人道的な支援活動も連携を保つことも重要視した。 実際のフィールドワークの場面では、調査対象者の諸事情を最優先したことから計画・予定していた聞き取り調査をすべて行うことはできなかった。また、人件費・謝金等については、本年度は研究フレームの構築が主たる課題ともなったことからアルバイト等の依頼をするまでには至らなかった。来年度においては、上記事柄を改善課題としたい。 調査対象地域でのフィールドワークでは、昨年度の実績を参考に現地と丁寧に活動計画を調整し、フィールドワークの機会拡大に努めたい。それに伴って、フィールドワークに関わる資料作成や活動記録、フィールドワークの結果を記録、分析等が生じることが考えらえる。研究を円滑に進めるために、その一部をアルバイトに委託したいと考える。
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