研究課題/領域番号 |
25350801
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研究機関 | 名古屋短期大学 |
研究代表者 |
寺田 恭子 名古屋短期大学, 現代教養学科, 教授 (20236996)
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研究分担者 |
寺田 泰人 名古屋経済大学短期大学部, その他部局等, 教授 (30221427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 車いすダンス / GMFCS Level Ⅴ / 重度脳性麻痺者 / フィットネス / 体力 / 自律神経系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アクティブアシストムーブメントを車いすダンスの積極的な1つの方法として導入し、重度身体障がい者のフィットネス向上に車いすダンスが有効かを探ることである。26年度においては、25年度からの実技方法の構築を継続課題としながらも、現時点で個々に合わせた方法を導入し、それを取り入れた方法で、ダンス時の酸素摂取量及び心拍数を測定した。さらに26年度はチェックマイハートを使用し、車いすダンス実施前及び実施後の自律神経系のHF・LF比についても測定し、車いすダンスが重度身体障がい者の身体に及ぼす影響について多角的に探ることを試みた。 測定は愛知県内のK入所施設で25年度に引き続き実施した。被験者数を増やすため、施設内の別の病棟と相談し、25年度被験者が所属するA病棟では引き続き組織的な介入を継続しつつ、26年度は新たにB病棟での取り組みを一から構築した。B病棟職員には、A病棟での実施内容や結果、研究のリミットについて報告し、新たなる被験者の募集をかけると共に職員への車いすダンス方法の実践講習会を同時に行った(8月)。その結果、1週間に3回程度の車いすダンスの組織的介入が可能となった。1回のダンス所要時間は最低5分~約15分程度とし、主に夕方実施された。被験者希望者は最初6名であったが最終的には5名となり、そのうち4名がGMFCSレベルⅤ(最重度脳性麻痺者)で、うち1名が筋ジストロフィー(福山型)であった。男性2名女性3名であり、筋ジスの女性1名が10歳である以外は、40歳を超える被験者である。2014年10月に車いすダンス継続エクササイズ導入前の測定を実施、その後2015年1月に3ヶ月後のデータを3日間ずつ測定した。 なお26年度は25年度の測定データを基にした論文を投稿し、Gazetta Medica in Itarianaに2015年4月14日にアクセプトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、2方面のアプローチから順調に進んでいる。1つはアクティブアシストムーブメントを導入したダンス方法の構築である。この点に関しては、被験者以外にもGMFCSレベルⅤの車いすダンス参加希望者に対して、個々の身体の総合的状態、関節可動域やダンスに対する参加意欲・認識度等も考慮に入れた「重度身体障がい者のためのクラシフィケーションスケール」を考案できた。それによって客観的に身体状態を評価しつつ、ダンスを通して実践を試みながら車いすダンス方法を1例ずつ構築できたことは大きい。またその積み重ねによって10例以上の実践方法と、それらの実践を通した基本パターンが整ってきたことから、2015年度は「重度身体障がい者のための車いすダンス方法導入DVD」(サンプル的なもの)と小冊子を作成する予定である。 一方、そのDVDや冊子を作成するにあたってエビデンスとなるべき、アクティブアシストムーブメントを取り入れた車いすダンス継続の測定は、1年目から2年目においてかなり進歩し充実した内容になった。具体的には3つの面あり、1つ目は組織的介入における職員へのアプローチと連携である。2つ目は測定結果の信憑性を高めるため、車いすダンス時の呼気ガス分析と心拍数測定を連続3日間にわたって測定できたことである。最後は、重度身体障がい者の身体状態を自立神経系の変化も含めて観察することになり、2014年度1月からチェックマイハートを測定時に導入したことである。 研究の成果は毎年大学の紀要に投稿し、今春には海外の医学雑誌に論文がアクセプトされたことは大いなる進歩であった。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度からは、現在までの達成度にも記入した通り、車いすダンスが重度身体障がい者にも適した運動方法であることを、現場(施設や学校等)にも広く認知してもらい、かつ実践してもらえるように導入DVDおよび小冊子の作成に取り組む予定である。DVDは導入として基本中の基本の動作および個々人への対応と集団への対応方法を取り入れた、初心者向け実践的なものとする。現在もっとも安価でDVDを作成してくれる作成者が決まり、今夏までに研究チームでその具体的内容を検討し作成準備に取り掛かる予定である。また小冊子においても同時進行できるように準備中である。DVD及び冊子が出来上がったら、同時にアンケート調査用紙も作成してそれらを配布(配布先は検討中)し、本研究グループの研究に協力・連携してくれる現場を獲得する。 次に継続している車いすダンスがより充実した内容で実施できるような工夫を施設内担当職員とさらに懇談し、環境と方法を改善していき、データの蓄積を確実に行ていく。被験者数を増やしたいので、DVD等の配布作業とアンケート調査の回収がカギとなるだろう。 研究成果は、初年度の2013年度から常に日本国内及び海外での発表を行っているので、その蓄積が2015年度も大いに期待できる。2015年度は新しく導入した車いすダンス実施前後の自律神経系の変化について発表するが、本結果と共にさらに継続測定した結果が今後得られる。様々な角度からのアプローチがあるので、海外のジャーナルへの投稿を積極的に行い、2016年度末までにプラス1本、合計2本のアクセプトを実現させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
交通費として使用する予定であったが、共同研究者らと車による移動もあり、交通費にかかる費用が予定より少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は被験者のリクルートをさらに行うために施設および学校への訪問回数が増えるため、その費用の一部としてとして使用する。
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