競技者人口、指導者人口の少ない境遇下にあるマイナーなスポーツであるアーチェリースポーツにおいて、高得点獲得のための競技力向上に向けて、工学的な手法を用いて、安定性・再現性のあるアーチェリー射形(フォーム)を構築することを目指すために、射形を構成している代表的な関節ポイントの3点、すなわち、ピポットポイント(押し手で弓を握っている手と弓が接している点)、アンカーポイント(引き手で引いた弦をあごに接触させている点)、押し手の右ひじの3点の3次元座標の変動の様子を、モーションキャプチャシステムを用いて計測して、これらが空間に成す3角形の面積の変動を測定した。この面積が小さい(すなわち3点の成す直線性が良い)ほど、的中得点が高いことを明らかにした。射手は、繰り返しの行射時に、これら3点を一直線上に置く意識で毎回の射形を作ると高得点獲得に有効であると確認できた。また、本研究において5年間で工学的手法を用いて競技力向上を目指すために考案・開発した種々のフィジカルコンピューティングシステム(射形変動可視化装置、押し手変動可視化装置、電子サイト、的中位置自動検出表示装置、近射とシミュレーションを併用した長距離練習システム等)を補助的に用いることで、研究代表者自らが練習を繰り返すことによって、5年間におけるハイスコアの変動及び安定の様子と、その成果として、平成29年度の島根県アーチェリー競技の成人男子代表選手に選出されて、第72回国民体育大会中国ブロック大会に出場を果たしたことを電気学会等で発表した。アーチェリーに限らず、スポーツ競技力をマイコンとセンサを主とするフィジカルコンピューティングを用いた工学的手法で向上できることを提言した。
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