【方法】ジャンプ選手を対象として,風速25m/sの気流条件で踏み切り動作を実施させた。風洞の床面に設置された6分力計によって空気力(揚力、抗力)を測定した(サンプリング周波数1kHz)。また、選手の右側面に設置した高速度ビデオカメラ(300~1000fps)によって映像を撮影し、2次元画像解析を行った。画像解析から算出された重心の加速度成分を6分力計によって測定されたデータから差し引くことで正味の流体力(揚力・抗力)を推定した。また,股関節角度,膝関節角度,上肢回転角度および重心高を算出し,これらの姿勢を独立変数とした多変量回帰式によって空気力を推定するモデルを構築中である。 【結果・考察】選手の合成重心の速度変化(水平方向:Vx及び鉛直上向き方向:Vy)、6分力計から得られた力の積分値,そして空気力の積分値(I_Drag及びI_Lift)と定義した。代表的な結果を示すと,Vx及びVyの最大値(0.82及び2.59m/s)に対する抗力及び揚力の影響を速度とそれぞれの空気力の積分値との比で求めるとVxに対して抗力は-96.7%、Vyに対して揚力は15.9%の割合を占めていた。すなわち、水平方向への床反力によって発揮された速度は空気抵抗によって約半分程度に減少させられ、鉛直方向の床反力による上昇速度には揚力による速度増大効果が示された。また、踏み切り動作の比較的初期の段階において獲得される上昇速度のほとんどは揚力によるものであった。踏み切り動作の姿勢変化に伴う空気力の推定モデルについては現在構築中であるが、このモデルを用いて初期の揚力獲得と姿勢との関係を明らかにすることによって、流体力学的に有効な踏み切り動作への知見が得られるものと考えられる。
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