研究課題/領域番号 |
25350806
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
立谷 泰久 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 研究員 (10392705)
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研究分担者 |
平木 貴子 日本大学, 経済学部, 助教 (00392704)
宇土 昌志 桐蔭横浜大学, スポーツ健康政策学部, 非常勤講師 (10648588)
村上 貴聡 東京理科大学, 理学部, 准教授 (30363344)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トップアスリート / 心理的競技能力 / 心理的要因 |
研究概要 |
平成25年度は、トップアスリートにおける心理的競技能力の内容を明らかにすることを目的として、アンケート調査(自由記述)と半構造化面接によるインタビュー調査を行った。アンケート調査の対象者は、大学生競技者824名(男性574名、女性250名、平均競技経験年数は9.1年)で、競技レベルは全国大会レベルの者が43.0%であった。得られた記述を質的に分析した結果、16サブカテゴリー、4カテゴリーが抽出された。その中の土台となる心理的競技能力に関することとして、「自信」、「モチベーション」、「目標設定」、「日常生活の管理」、「自己への気づき」、そして「客観性」の6つの内容が示された。次に、対象者を国際大会レベルと国内大会レベルに分け、さらに競技種目を5つのグループに分別し、クロス集計を行った結果、どのグループにおいても「自信」に関する内容が抽出され、いくつかのグループで「集中力」の内容が抽出された。 また、トップアスリート7名を対象に半構造化面接によるインタビュー調査を行った。競技種目は、個人、対人、チーム種目など多様であった。対象者は、最初に「トップアスリートに必要な心理的要素・側面」について自由に答えた。次に我々が先行研究をもとに作成したトップアスリートに必要だと思われる心理的要素・側面のリスト(32項目)から、5つの項目を選んだ。その結果、自由回答では、「周りに左右されない」、「自分自身を持っていることが必要」、「平常心」、「勝ちたいという強い気持ち」、「覚悟を決める」、「自信」などの回答が得られた。また、32項目のリストからの抽出では、「心に余裕をもつこと」、「自分を持っていること」、「自分のことを理解していること」、「自信」、「集中力」が多かった。自由回答とリストの抽出から、「自分を持っていること」と「自信」の2つの要素が、トップアスリートには特に必要な心理的要素であるということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画した、アンケート調査と半構造化面接によるインタビュー調査はおおむね順調に遂行できた。アンケート調査においては、大学生競技者824名(男性574名、女性250名)を対象に行った。その結果、「自信」、「モチベーション」、「目標設定」、「日常生活の管理」、「自己への気づき」、「客観性」、「集中力」がトップアスリートに必要な心理的要素のキーワードとして抽出された。これらの結果から、トップアスリートには、従来示されていた心理的競技能力(Tokunaga, 2001)に共通するスキル、他に求められるスキルのある可能性が示された。その中で、自信と集中力はほとんどの競技において重要な要素であること、そして、トップアスリートには多様な心理的要素が求められることが示唆された。本結果の詳細については、2014年8月7~10日に行われる第7回アジア南太平洋国際スポーツ心理学会大会(ASPASP)にて、2演題に分けて発表予定である(発表は受理されている)。 また、その後、トップアスリート7名を対象に半構造化面接によるインタビュー調査を行った。この結果、「自分を持っていること」と「自信」の2つの要素がトップアスリートには特に必要な心理的要素であるということが明らかになった。この結果の詳細についても、2014年8月25~28日に行われる、日本体育学会第65回大会で発表予定(申込、予稿集送付済み)である。 このように、当初の計画通り2つの調査を行い、また本年度において、その成果として3演題を発表する予定であり、おおむね順調に進展していると言える。これらの成果を踏まえ、平成26年度においても、半構造化面接によるインタビュー調査とアンケート調査を計画しており、計画通り遂行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に行ったアンケートとインタビュー調査から得られたデータから、予備調査(「トップアスリートに必要な心理的要因」)の質問項目(70問程度)を作成する。 この予備調査の目的は、より精度の高い「トップアスリートに必要な心理的要因」を明らかにし、「トップアスリートにおける心理的競技能力評価尺度の開発」に向けて、より具体的なものを作成するということである。本予備調査の対象は、体育・スポーツを専攻する学生や体育会に所属する大学生500名程度を予定している。方法は、体育・スポーツを専攻する学生及び体育会に所属する大学生を対象に、大学の講義等の時に、「トップアスリートに必要な心理的要因」についてのアンケートを実施する。A4・1~2枚程度(70問程度のアンケートで、10~15分程度のもの)を予定している。調査後は、データを詳細に分析し、さらに精度の高い「トップアスリートに必要な心理的要因」を明らかにする。その後、その得られた結果から、来年度(本研究の3年目。最終年度)に繋げる研究について検討する。今年度の研究は3年の計画で遂行されるもの(現在2年目)であり、今回は最終的な成果に向けた中間的な研究となるものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度(平成25年度)の未使用分は、被験者が当初の見込みより少なく、被験者謝金とデータ入力等の人件費が、当初の見込みよりかからなかっため発生した。また、旅費についても、関連学会等が少なく、情報収集等が十分にできなかったため発生した。 繰り越された、旅費、人件費・謝金、その他においては、次年度(平成26年度~)以降の研究において、国際学会(情報収集のため)への出張旅費、また被験者謝金およびデータ入力等の人件費等で使用する予定である。
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