研究課題/領域番号 |
25350807
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研究機関 | 兵庫県立福祉のまちづくり研究所 |
研究代表者 |
中村 俊哉 兵庫県立福祉のまちづくり研究所, その他部局等, 技師 (20426547)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 車いす / 障害者スポーツ |
研究実績の概要 |
平成26年度では、車いすを漕ぐときに生じる駆動トルクの計測装置を試作し、駆動フォームの姿勢計測環境を構築した。 駆動トルクの計測装置試作:本研究では、連携研究者が一般的な車いすを対象に行っていたトルク計測の手法(ホイールとハンドリムを結ぶ支柱の歪みを利用し駆動トルクを求める)を用いて、車いすマラソン競技者の駆動トルクを計測する予定である。そのため、平成26年度では、平成25年度に購入した研究協力者である車いすマラソン競技者が使用しているのと同等の競技用ホイールに対して、歪みゲージの貼付や歪みアンプ及びワイヤレスデータロガーの固定を行った。歪みゲージの貼付では、ホイールとハンドリムを結ぶ支柱の長さを研究協力者が用いているホイールと同じにすると、支柱の長さが歪みゲージを貼付するには短かった。支柱を単純に延長するとホイールとハンドリムの位置関係が変わり、駆動フォームに影響が生じると考えられたため、ホイールとハンドリムの位置関係を変更することなく支柱を延長するための部品を製作し用いた。歪みアンプ及びワイヤレスデータロガーの固定後に歪みゲージの出力とトルク間の校正曲線を求めた。 駆動フォームの計測環境構築:駆動フォームの計測定量的評価を行うために、マイクロソフト社製の深度センサであるKinectを用いてローラ上を漕ぐ競技者の身体各部における3次元座標の計測を試みた。Kinectには車いす使用者を想定した撮影モードがあるが、正面から撮影した前額面の画像から身体各部の3次元座標を推定することはできなかった。Kinectは撮影した画像に対して形状認識を行うことで身体各部の座標を算出しているが、マラソン競技者は深い前傾姿勢を取ることが多いため、正面から撮影した画像に対しては形状を認識できなかったと考えられる。しかし、上方から水平面を撮影することにより身体各部の3次元座標が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
駆動トルクの計測システムの遅れ:本研究では駆動トルクはハンドリムとホイールを繋ぐ支柱に貼付した歪みゲージを用いて算出する。しかし、支柱の長さは歪みゲージを貼付するには短かった。ホイールとハンドリムの位置関係を変えることなく支柱の長さを延長するための部品を製作する必要が生じた。また、マラソン用の車いすは一般の車いすとは異なりホイールが傾斜しているため、ホイールと車体の間の隙間が小さく、ホイールに固定した歪みアンプやワイヤレスデータロガーが車体に干渉してしまった。歪みアンプやワイヤレスデータロガーの機種選定や固定方法の選択に時間を費やした。 駆動フォームの姿勢計測環境構築の遅れ:車いすマラソンの競技者は深い前傾姿勢で車いすを漕ぐため、撮影した画像に対して形状認識を行うKinectでは正面からの撮影では、身体各部の3次元座標が得られなかった。撮影条件などを試行錯誤し、深い前傾姿勢の影響が少ない上方からの撮影で身体各部の3次元座標が得られることに気付くまで時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度末に駆動トルク及び駆動フォームの計測が行えることを確認したので、本年度では、競技者を対象に駆動トルクや駆動フォーム、心拍数などの計測を実施する。被験者となる競技者の募集は、効率的に行う為に研究協力者である競技者や体育指導員に依頼する。 また、ハンドリムとホイールの位置関係が固定されているため、ハンドリムとホイールの位置関係が異なる歪みゲージ付きハンドリムを作成することで競技者毎に適した位置関係で計測が行えるようにする。また、ハンドリムを交換した際に、簡便に歪みゲージの校正が行えるように校正装置を作成する。駆動フォームの計測精度の向上を目的に昨年度に販売が開始されたKinectの新バージョンであるKinect v2への置き換えを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
駆動トルクや駆動フォームの計測装置に課題が生じてしまい、計測環境の構築が遅れてしまった。計測装置の課題解決工程や必要経費が不明瞭であったため、心拍センサやKinect用のモバイルバッテリなどの駆動トルクや駆動フォームの計測以外に必要な物品の発注や学会出張を控えることにしたため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は本来の予定どおり、控えていた心拍センサやその周辺回路、Kinect v2などの発注や本研究の周知を目的とした学会や研究打合わせへの出張に使用する。また、被験者毎に適したハンドリムとホイールの位置関係で計測を行う為に、ハンドリムとホイールの位置関係が異なる歪みゲージ付きハンドリムの製作にも使用する。
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