平成27年度には,運動トレーニング(30分間のトレッドミル走,15 m/分,斜度5度,30分間,5回/週)に対する20%カロリー制限(CR)と間歇的絶食(IF,摂食日は自由摂取で非摂食日は完全絶食の隔日摂食)による食事介入の交互作用を,肝臓を対象にして検討した.12週間の介入期間終了48時間後に試料を採取し解析したところ,肝臓のSIRT1(Sirtuin 1),PGC-1α(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator-1α),AMPK(AMP-activated protein kinase),あるいは酸化ストレス応答性因子Nrf2(NF-E2-related factor 2)のmRNA発現レベルに関して,運動トレーニングに食事介入を加えた場合の顕著な効果は確認できなかった.一方,長寿関連遺伝子や転写活性化補助因子の発現調節に関わる総アディポネクチンの血中濃度は運動トレーニングで高まることが知られているが,食事介入はその作用をさらに有意に増大させた.特にIFによる相乗作用が顕著であり,CRの効果と比較して有意に大きなものであった.このように,食事介入(CRとIF)は運動トレーニングによる健康増進効果を説明する各種マーカーの挙動に影響を及ぼし得るが,それらの修飾作用は遺伝子の転写調節レベルと体液レベルとで異なる可能性が示唆された.
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