研究課題/領域番号 |
25350813
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 直也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324508)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | メカニカルストレス / 低エネルギーストレス / 骨格筋培養細胞 / タンパク質合成 |
研究概要 |
骨格筋は運動様式の違いにより異なる適応が起きる。すなわち、有酸素運動は骨格筋の持久的能力を高めるが、レジスタンス運動は筋肥大を誘導する。本研究の目的は、細胞内の低エネルギーストレスおよびメカニカルストレスの面から、運動の適応機序に関わる分子を検索することである。研究初年度には、まず有酸素運動とレジスタンス運動の骨格筋培養細胞モデルの検討を行った。対象には筋芽由来の培養細胞であるC2C12細胞を用いた。C2C12細胞は分化誘導培地で培養すると多核の筋管細胞を形成する。本研究には分化誘導4~5日目の細胞を用いた。レジスタンス運動のモデルとしてメカニカルストレス(ストレッチ)を細胞伸展装置を用いて負荷した。一方、有酸素運動のモデルとしては電気刺激装置による自発的収縮を負荷した。ストレッチ刺激はタンパク質合成促進作用の指標となるp70 S6 kinase (p70S6K)のリン酸化を有意に上昇させたが、自発的収縮刺激では影響が認められなかった。一方、細胞内低エネルギーの指標となるAMP-activated protein kinase α (AMPKα)のリン酸化もストレッチ刺激によってのみ上昇した。すなわち、自発的収縮刺激に比してストレッチ刺激は細胞内のエネルギー状態の変動やタンパク質合成促進作用が強いことが示唆された。AMPKαの活性化剤であるAICAR存在下ではストレッチ刺激によるp70S6Kのリン酸化上昇は消失したが、抑制剤であるCompund C存在下ではストレッチ、自発的収縮刺激ともにp70S6Kのリン酸化が上昇した。以上の結果より、生理的レベルのストレスはp70S6KとAMPKαを同時に活性化することが認められ、AMPKαによるmTOR経路の抑制は強固でないことが示唆された。一方、薬理的なAMPKα活性の調節はmTOR経路に影響を及ぼすことが認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メカニカルストレスの負荷方法については、ストレッチチャンバー上で培養した筋管細胞を細胞伸展装置でストレッチ刺激を加えることで達成している。評価方法についてもタンパク合成促進作用の指標となるp70S6Kのリン酸化およびAMPKαのリン酸化をウエスタンブロット法にて定量的に解析している。また、刺激後の遺伝子発現はリアルタイムRT-PCR法によって解析している。低エネルギーストレスの負荷方法は培養細胞ペーシングシステムを用いて、電気刺激による自発的な収縮を負荷しているが、現在のところAMPKαのリン酸化を指標とした低エネルギー状態が実現できていない。十分な低エネルギー状態を達成するためには刺激条件の最適化が必要である。AMPK経路の薬理的活性化剤および阻害剤が及ぼす影響については研究計画どおりに解析が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は電気刺激による自発的収縮刺激が十分な細胞内低エネルギー状態を達成する条件の検討を行う。国内外の先行研究等も参考に、有効な条件を検索する。また、siRNA干渉法による遺伝子発現の抑制実験は、二本鎖RNAの導入のみでは十分な抑制効果を得ることができていないため、恒常的またはテトラサイクリン依存的に二本鎖RNAを発現する細胞株の樹立を行っている。初年度の研究により、メカニカルストレスおよび自発的収縮刺激後には分岐鎖アミノ酸ロイシンのタンパク質合成促進作用が非刺激細胞に比べて上昇することを見いだし、そのメカニズムとしてアミノ酸輸送体の発現上昇が考えられた。そこで、26年度には当該遺伝子の発現抑制実験を行い、詳細な解析を実施する。
|