研究課題
非侵襲的脳刺激介入による運動パフォーマンスの変化に関する実験を実施した.非侵襲的脳刺激法として,末梢神経電気刺激(ES)-経頭蓋磁気刺激(TMS)の組合せによるpaired associative stimulation(PAS)を採用した.ES-TMS時間間隔はM1の興奮性増大を誘引するとされる25ms(PAS25)とした.被験筋は右手第1背側骨間筋(FDI)とし,先行研究で報告された方法にしたがい,0.2ms幅の矩形波を右手首関節部で正中尺骨神経に知覚閾値の3倍の強度で与えた.TMSは左大脳半球のFDI試適部位に与え,FDIから約1mV振幅の運動誘発電位(MEP)を誘発した.これらの刺激を組み合わせたPASを0.2Hzで180回(15分間),安静状態の被験者に与え,M1の可塑性を誘発し,PAS介入前後における運動パフォーマンス及びMEPの変化を記録した.対象条件としてシャム刺激となるES-TMS時間間隔100ms(PAS100)も実施した.実験は同一被験者を1週間以上の間隔をおいて実施するクロスオーバーデザインとした.右利き被験者10名程度を予定しており,クロスオーバーデザインにより実験を行う.観察した運動パフォーマンス指標としては,筋力発揮系として最大随意収縮強度(MVC)による瞬時示指外転動作と最大筋力到達時間,速度発揮系として聴覚刺激に対する示指外転時のEMG反応時間と示指外転動作の最大加速度を測定し,MEP振幅変化と併せてPAS介入効果を検討した.PAS25のみに介入後MEP振幅の一過性の増大は確認できた.運動パフォーマンス指標については,PAS25のMVCのみ介入前に比較して有意な増大が見られたが,それ以外の指標についてはPAS効果はみられなかった.
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