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2013 年度 実施状況報告書

運動による抗うつ・抗不安作用の神経機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25350819
研究種目

基盤研究(C)

研究機関首都大学東京

研究代表者

北 一郎  首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (10186223)

研究分担者 西島 壮  首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (10431678)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード運動 / うつ病 / 脳機能 / 行動神経科学 / 免役組織化学 / 可塑性
研究概要

スポーツ活動や運動は、身体にとどまらずストレスに関連した精神疾患の予防・改善といった“こころ”の健康にも多様な恩恵効果をもたらす。この背景には、脳の高い可塑性と運動との相互作用による神経系の適応的変化が関連している。最新の神経科学研究は、運動が脳に機能的、解剖学的変化を誘発することを明らかにしている。しかし、“運動の癒し効果”を発現する神経機序や有益な運動条件については依然解明されていない。本研究では、ストレス関連精神疾患(うつ病、不安障害)に対する運動の効果とその神経機序について、行動神経科学的アプローチを用いて解明し、これらの疾患に対する取り組みを“治療から予防へ”とシフトさせる運動方略を探索することを目的とした。その目的達成のために、本年度は運動強度に焦点を当て、急性運動時に活性化する脳神経回路(機能マッピング)、及び、強度の異なる慢性運動(4~6週)による行動変容(うつ様行動)と脳内神経活動の応答特性における運動強度依存性(乳酸性作業閾値以下と以上)について検討した。機能マッピングの解析は、逆行性トレーシング法と免役組織化学法を併用し、中脳縫線核(抗うつ・抗不安に関連)から海馬(記憶、うつ病、ストレス制御に関連)に投射する経路の活性を検討した。また、慢性運動の効果を解析するために、強制水泳テスト及びスクロース嗜好性テストを用いてうつ様行動を評価し、同時に中脳縫線核と視床下部室傍核(ストレス中枢)における神経活動の強度依存性について検討した。結果として、中脳縫線核から海馬へ投射する神経経路は、低強度運動時により活性化する傾向にあった。一方、慢性運動は強度にかかわらずうつ様行動を減少する傾向にあったが、その神経活動のパターンは運動強度によって異なる傾向にあった。これらのことから、運動による抗うつ効果の神経機序は、運動強度により異なる可能性があるものと推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、動物実験による抑うつ・不安症状の評価に複数の行動実験を行ったが、それらの反応に、若干、予想を上回る個体差がみられ、実験条件の見直し、測定回数の増加などを検討していたため。また、神経回路の機能マッピング及び長期的神経活動の解析において、先行研究の実験手技及び結果を一部再現することができず、それらを改善するための試行錯誤や実験方法の再確認に時間を要したため。これらの問題が生じたため実験が予備的段階にとどまり、予算についても一部は次年度に持ち越すことになった。

今後の研究の推進方策

現段階での実験手技・方法の問題点に関して、実験操作の見直し、実験試薬の変更、結果の再検証などを通して改善する。その上で、運動による抗うつ・抗不安に関する行動変容、脳神経活動の応答特性について継続して検証し再現性のあるデータを収集する。さらに同様の実験を、ストレス関連精神疾患モデル動物(うつモデル動物)を対象に実施し、運動による抗うつ・抗不安効果の背景にある脳の機能及び可塑性について検討する。そのために、運動時に活性化する脳神経回路の機能マッピング、運動による神経新生、神経成長因子、神経伝達物質の応答特性の解析を目指し研究を推進する。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、動物実験による抑うつ・不安症状の評価に複数の行動実験を行ったが、それらの反応に、若干、予想を上回る個体差がみられたため、実験条件の見直し、測定回数の増加などを検討しており、また、神経回路の機能マッピング及び長期的神経活動の解析において、先行研究の実験手技及び結果が一部再現できず、それを改善するための試行錯誤や実験方法の再確認に時間を要したため、実験が予備的な段階にとどまり、予算の一部を次年度に持ち越すことになった。
現段階での実験手技・方法の問題点に関して、実験操作の見直し、実験試薬の変更、結果の再検証などを通して改善するために使用する。また、その上で、本来の研究計画である運動による抗うつ・抗不安に関する行動変容、脳神経活動の応答特性について継続して検証し再現性のあるデータを収集するために使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Physical exercise can induce brain plasticity and regulate mental function2014

    • 著者名/発表者名
      Kita I
    • 雑誌名

      Advances in Exercise and Sports Physiology

      巻: 20 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] Emotional stress evoked by classical fear conditioning induces yawning behavior in rats2014

    • 著者名/発表者名
      Kubota N, Amemiya S, Yanagita S, Nishijima T, Kita I
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 566 ページ: 182-187

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2014.02.064

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Noradrenergic modulation of vicarious trial and error behavior during a spatial decision-making task in rats2014

    • 著者名/発表者名
      Amemiya S, Noji T, Kubota N, Nishijima T, Kita I
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 265 ページ: 291-301

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2014.01.031

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Long-term exercise is a potent trigger for delta FosB induction in the hippocampus along the dorso-ventral axis2013

    • 著者名/発表者名
      Nishijima T, Kawakami M, Kita I
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 8 ページ: 1-17

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0081245

    • 査読あり
  • [学会発表] 自発運動中断による不活動化がマウス海馬における炎症性サイトカイン発現に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      西島 壮、市川里沙、北 一郎
    • 学会等名
      第68回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130921-20130923
  • [学会発表] 一過性トレッドミル走運動に対するラット海馬におけるMMP-9活性応答の解明2013

    • 著者名/発表者名
      川上将史、北 一郎、西島 壮
    • 学会等名
      第68回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130921-20130923
  • [学会発表] 自発運動が摂食量及び不安行動に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      田村 愛、西井愛裕、北 一郎
    • 学会等名
      第21回日本運動生理学会大会
    • 発表場所
      東京国際大学
    • 年月日
      20130727-20130728
  • [学会発表] 運動強度の違いがうつ様行動と脳内神経活動に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      西井愛裕、田村 愛、北 一郎
    • 学会等名
      第21回日本運動生理学会大会
    • 発表場所
      東京国際大学
    • 年月日
      20130727-20130728
  • [学会発表] Intensity-dependent effects of background noise on motor learning and performance in mice2013

    • 著者名/発表者名
      Nishijima T, Hosokawa M, Amemiya S, Kita, I
    • 学会等名
      Annual Meeting of International Behavioral Neuroscience Society
    • 発表場所
      アイルランド、マラハイド
    • 年月日
      20130625-20130630
  • [備考] 首都大学東京 行動生理学研究室

    • URL

      http://www.comp.tmu.ac.jp/sport/personal/kita/kita.html

  • [備考] 北一郎:行動生理学研究室 首都大学東京

    • URL

      http://www.comp.tmu.ac.jp/behav-neurosci/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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