生体リズムの乱れが、体内のエネルギー代謝機能を低下させ、肥満を導くことが知られている。したがって、体重管理には生体リズムを考慮することが大切となる。運動には、体脂肪量の低下や除脂肪量の増大による「太りにくい体質」への体質改善の効果がある。本研究では、動物試験により、生体リズムを調整しているエネルギー代謝と概日リズムの制御機構に対する運動の効果を、それに関与する標的遺伝子群の発現量を指標として検証することを目的とした。 平成25年度には、6週間の高脂肪食摂取により、対照ラットと同摂取エネルギー量の食餌にも関わらず体重や内臓脂肪量が有意に増加しているかを確認した。その際、概日リズムの制御機構の時間遺伝子の1日の位相が対照ラットと比べて乱れが生じ、体重増加の一因として体内時計を司る時間遺伝子の発現量が関与していることも確認できた。 平成26年度には、連日運動(トレーニング)が、高脂肪食・肥満モデルラットのエネルギー代謝と概日リズムの制御機構の標的時間遺伝子の発現量に影響を及ぶすか運動の主導組織である骨格筋を用いて検討した。その結果、高脂肪食摂取により発生した体重や内蔵脂肪量の増加は6週間の連日運動(トレーニング)により改善された。その際、骨格筋において、高脂肪食摂取により乱れた体内時計を司る時間遺伝子の発現量が改善されることはなかった。 平成27年度には、連日運動(トレーニング)が、高脂肪食・肥満モデルラットのエネルギー代謝と概日リズムの制御機構の標的時間遺伝子の発現量に影響を及ぶすか肝臓を用いて検討を深めた。その結果、肝臓において、高脂肪食摂取により乱れた時間遺伝子の発現量が改善されることが明らかとなった。 以上のことから、運動による肥満の改善効果が生じる一因として、生体内の多くの生理機能に関与する体内時計を司る時間遺伝子の発現量が関連していると推察された。
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