研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が従来から検討を重ねてきた、押圧量が大きな据置型筋硬度計測装置(Pressure Meter: 以下PM)と超音波画像診断によるReal-time Tissue Elastography(以下 RTE)による筋硬度評価を比較検討したものである。今年度は最終年度として筋損傷前後の筋硬度変化について検討した。野坂和則氏(Edith Cowan大学:研究協力者)の協力のもとダンベルを用いたeccentric運動とconcentric運動を左右の上腕に実施し筋損傷を誘発した。また、RTE計測の専従者として稲見崇孝氏(早稲田大学)を迎え実験を実施した。 被験者10名においてeccentric運動側に負荷直後から4日後にかけて肘関節角度減少、最大筋力低下、筋痛が生じた。一方、concentric運動側では負荷直後に筋力低下が生じるものの1日後には回復に転じ、関節可動域減少と筋痛も軽微なものであった。この際の、筋硬度変化として肘関節の強制伸展時(EAMG)及び安静状態(RANG)のPMとRTEを比較した。PMはEANGにおいて運動直後から4日後まで有意な筋硬度の増加(運動前:21.6 ± 2.0 kPa , 4日後:30.1 ± 3.7 kPa )が観察されたが、RANGでは有意な増加は認められなかった。一方、RTEでは筋硬度に対応するひずみ率(Strain Ratio :SR)がconcentric運動側の運動直後で30%低下したもののeccentric運動側では運動4日目までに20-28%の低下に留まった。つまり、運動による筋硬度の増加(ひずみ率の低下)は観察されたが、PMとRTEの間に有意な相関は認められなかった。 前年度からの基礎的検討である安静時、筋収縮時のPMとRTEの比較においてもPMの筋硬度とRTEのSR間の推定精度は低かった。これらを総合しPMとRTEは異なる特性を評価している可能性が示された。今後こうした所見をスポーツ科学の現場に提示するため更なる検討を加える必要がある。
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