唾液は非侵襲的に、安全にヒトの体から採取できる臨床サンプルである。本実験は肉体ストレスと精神ストレスを区別できる唾液中のバイオマーカーを探索し見出すことで、ヒトの健康管理や国民のQOLに貢献することを目的とする。 初年度と2年目は、水浸拘束を精神ストレスとしてラットに負荷し、唾液をSDS電気泳動で分離し、CBB染色後に高速液体-クロマトグラフィー-質量分析/質量分析系(LC-MS/MS)で唾液タンパク質をプロテオーム解析した。その結果、精神ストレスによって増加するいくつかの酵素や分泌タンパク質を同定し、バイオマーカー候補を見出した。最終年度(2015年度)は、トレッドミルによって運動負荷し、取分けc-Fos遺伝子の発現が有意に増大する条件で負荷して唾液採取を行い、一次元SDS電気泳動上、増加するするタンパク質のゲル片のプロテオーム解析および対照ラットと比較して増加するタンパク質の網羅的なプロテオーム解析の相対的定量法iTRAQ解析を行った。その結果、ゲル片のプロテオーム解析では約20KDaの分子量をもつタンパク質は3種類、約75KDaの分子量をもつタンパク質は4種類、約250KDaの分子量をもつタンパク質は3種類であった。また、iTRAQ解析の結果では、2倍以上が増加したタンパク質は約16種類見出された。一次元電気泳動のゲル片解析とiTRAQ解析を比較した結果、約20、75、250KDaの分子量をもつタンパク質はそれぞれ2種類のタンパク質が増加していた。また、精神ストレス或いは、肉体ストレスを負荷した時、共通して増加するタンパク質として4種類、精神ストレス負荷のみ増加するタンパク質は1種類存在することを見出した。しかし、肉体ストレス負荷のみで増加するタンパク質については精神ストレス負荷後の唾液タンパク質のiTRAQ法による解析結果を待たねばならない。
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