研究実績の概要 |
除神経による下肢不動にした萎縮筋への直接電気刺激の効果が、骨量並びに骨構造以外に、骨の質的要素にも現れるか、また最終的に骨強度にどの程度影響するのかについて骨幹皮質骨をターゲットに検証した。下肢不動モデル動物は、神経凍結法を用いて坐骨神経の凍結損傷を起こして一過性にラットの下肢を不動にし、下肢骨格筋および骨の萎縮を惹起して、萎縮初期(1週間)について調べた。不動初期の1週間において、本プロジェクトによって効果が確認された電気刺激条件で前脛骨筋を1日30分間刺激した。その結果、脛骨骨幹部の3点支持曲げ破断試験で得られた皮質骨の力学的特性(Maximum load, stiffness)に関して、電気刺激誘発性筋収縮(ESMC)の実施により、不動による低下を軽減した。一方、マイクロCT撮影で分析した皮質骨の形態(tissue volume, second moment of area, cortical bone fraction)に関しては有意な変化はなく、ESMCの効果はみられなかった。骨密度(BMD)では不動により有意に低下したが、ESMCにより有意に高いレベルにあり、対照群と同レベルであった。骨組織観察の結果から、骨細胞から分泌され石灰化に関連するdentin matrix protein (DMP)-1の発現は不動により低下するが、ESMCにより対照群と同レベルに有意に高いレベルでありその効果が確認された。本研究で用いた条件での電気刺激誘発性筋収縮の処方は、不動初期における骨強度の低下を軽減することが確認され、それは骨強度の規定因子のうち、骨幹部皮質骨の量的及び構造的因子よりも、質的因子の改善による軽減の可能性が強いものと推察された。特に、骨基質石灰化に関連するタンパク質(DMP1)発現に対する効果がみられたことから、骨細胞を標的とした機械的刺激の重要性が示唆された。
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