研究課題/領域番号 |
25350830
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
中村 友浩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30217872)
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研究分担者 |
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 三次元培養骨格筋 / 電気刺激 / バイオインフォマテックス / マイクロアレイ / マイオカイン |
研究実績の概要 |
本研究は、平成25~27年度にかけ、三次元培養骨格筋の収縮に伴って発現してくる遺伝子群の網羅的解析を目的に実施されている。三次元培養筋は、印加される電気刺激によって収縮を起こすが、収縮に伴う遺伝子プロファイルを明確にするために、十分に収縮させる条件を明確にする必要があった。しかしながら、培養筋に対する長時間の電気刺激は、細胞損傷を招く可能性があるため、電気刺激による細胞損傷の有無を定量的に明らかにする必要があった。 したがって、平成25年度は、電気刺激装置を購入し、成熟した培養筋に対して持続的に電気刺激を印加し、張力低下を定量的に観察できる実験条件を確立する実験を行った。その結果、培地の温度やpHの変化を起こさずに、60分間の短時間でほぼ100%の張力低下を生み出す条件を確立した。この条件では、培養筋の機能的な低下を観察できたが、生体筋の疲労困憊条件と類似しているかという生理学的検証は行われていない。そのため、平成26年度は、電気刺激による張力低下が、細胞損傷や細胞死を誘導していないか、定量的に観察する必要があった。細胞損傷を定量的に検証する方法として、細胞から遊離してくるLDH活性を検討する方法を採用した。その結果、コントロールの培養筋と比較し、電気刺激を印加し続けた培養筋では、有意ではないが高いLDH活性が観察された。また、損傷が起きていない生体筋の疲労では、早期に回復が見られるため、本実験でも電気刺激後24時間後に張力を測定したが、張力の回復は見られなかった。この結果から、100%に近い張力低下を生み出す持続的な電気刺激によって、培養筋細胞が損傷している可能性を否定できなくなった。 前年度の結果を踏まえ、平成27年度は細胞損傷が抑えられるような電気刺激条件でマイクロアレイ解析を実施し、発現上昇する遺伝子群についてバイオインフォマテック解析から生物学的意義を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、3次元培養骨格筋に電気刺激を与えて収縮を誘導し、マイクロアレイおよびIn silico解析を行う予定であった。しかしながら、電気刺激による細胞損傷評価の条件設定に多くの時間を費やしたために、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの結果から、培養筋を短時間(60分)にて十分収縮させる条件を規定できたものの、電気刺激による細胞損傷の可能性を完全に否定できない結果となった。そこで、最終年度は、細胞損傷の可能性が少ない条件でマイクロアレイ解析を行う計画である。さらに、電気刺激によって2倍以上上昇した遺伝子群について、生物学的意義を検討するためにバイオインフォマテックス解析を実施し、細胞内パスウェイおよび新規マイオカインの候補遺伝子を同定したいと考えている。また、同定されたマイオカイン候補遺伝子が、生体筋においても発現しているか、生理・生化学的解析を実施して行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気刺激による3次元培養筋の損傷評価が遅れ、平成26年度に実施予定であったマイクロアレイ解析を行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度末に3次元培養筋の損傷評価が、ほぼ完了したために、その解析結果に基づき、マイクロアレイ解析ならびにinsilico解析を早急に実施する予定である。
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