本研究は、平成25~27年度にかけ、三次元培養骨格筋の収縮に伴って発現してくる遺伝子群の網羅的解析を目的に行われた。最終年度は、三次元培養筋に対して、十分収縮させる条件で電気刺激を与え、発現上昇する遺伝子群をマイクロアレイ、バイオインフォマテック解析から網羅的に解析した。 遺伝子の発現は、電気刺激10分、30分負荷2条件で、刺激直後と刺激後5時間後の発現プロファイルをマイクロアレイ法で検討した。その結果、発現が2倍以上上昇する遺伝子は、10分間電気刺激直後で514遺伝子、刺激5時間後で1284遺伝子、5時間後までの変化率では、2351遺伝子が得られた。また、30分間電気刺激直後では、3210遺伝子、刺激5時間後では、926遺伝子、5時間後までの変化率で2219遺伝子が得られた。 公開されているデータベースを利用して、クラスター解析したところ、膜タンパク質、糖タンパク質、シグナル配列を持つタンパク質が上位にくることが明らかとなった。今まで筋細胞から分泌が予想されていなかった遺伝子産物を探索したところ、複数の新規マイオカイン候補を取得することができた。新規マイオカイン候補の発現における妥当性を検証するために、候補遺伝子群について、リアルタイムPCR法で確認したところ、摂食調節に関わるコレシストキニンが筋の分化、成熟と共に上昇し、電気刺激によっても発現誘導されることが予備的な実験で明らかになった。 以上の事から、研究機関全体を通じて、電気刺激負荷による三次元培養筋の収縮モデルおよび、複数の電気刺激条件によって発現誘導される遺伝子群の生物学的意義を確立することができた。また、摂食調節に関する新規マイオカイン候補が取得できたために、身体活動に伴う筋活動と摂食調節との関係性に新たなクロストークが存在する可能性を示唆することができた。
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