この研究課題で明らかにしようとした課題は、A)ラットに昼の一定時間だけ摂食を許すと(制限給餌)、エネルギーバランスは負であるにもかかわらず、給餌時間の前に自発運動(回転カゴ運動)が亢進する。しかし餌を通常のものから高脂肪食に替えると、摂食量が増加するにもかかわらず給餌時間前の回転カゴ運動の亢進は無くなってしまう。B)回転カゴでの回転を許可して、ラットの自発運動が増加すると、消費エネルギ-が増加するにもかかわらす、摂食量(特に高脂肪食の)が減少するのは、どのような仕組みによるかであった。しかし所属する大学が変わって、新しく整備した動物実験室では、A)の現象が再現できなかった。その理由を明らかにするために、1)与える餌を以前の物と同じにした、2)以前と同じ回転カゴ付きケージは販売していなかったので、現在使用中の物より、以前のカゴに近いタイプの回転カゴにした、3)ラット飼育室の温度を変更した、4)ラットの系統を変えた、5)床敷き様に金網をいれた。このいずれの変更によっても、以前の結果が長い間再現できなかった。しかし実験開始3年目になって、突然A)の現象が再現できるようになった。 以上の理由により、思うような実験結果が得られなかったが、A)の現象が再現できなかった理由が明らかにできれば、摂食量と自発運動の相互関係を解明する上で、貴重な手がかりが得られると考えられる。またこの研究をしている間に、制限給餌時刻の前の自発運動の亢進には、餌の量を測定することを学習するためのものが含まれていることが明らかになった。そこで、科学研究費補助金を使って、摂食量自動測定装置に回転カゴを取り付けた新しい装置を作成して貰うことができた。今後はこの装置を使って、A)、B)の場合に限らず、絶食や性周期に伴う自発運動量の変動の際の、摂食のパターンを詳しく調べたいと思っている。
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