外来定期通院中の2型糖尿病患者18名に対して通常診療下で全脂質中脂肪酸分画(24種類の脂肪酸濃度)を測定した。通院間隔は4~8週間毎であり、研究期間は12~18ヶ月であった。 パルミトレイン酸濃度をパルミチン酸濃度で割った値(以下、SCD-1(16)index)は、食後(随時)採血にもかかわらず、同一患者においては測定日毎に乱高下することはなく、安定した値を示していた。上昇または低下する場合でも経時的に一定の方向性を示すことがほとんどであった。SCD-1(16)indexと最も相関関係が認められたのは高精度体組成計(インピーダンス法)で測定された体幹部(腹部)脂肪量であった。また、AST・γ-GTPとの相関が認められる症例も多かった。 同一個人で測定された上記の腹部脂肪量の経時的変化は内臓脂肪量の変化を反映していると考えられる。実際、本研究では腹部脂肪量とHbA1cに正の相関関係が認められ、内臓脂肪の増加が耐糖能の悪化に関与していることが示唆された。SCD-1(16)indexが腹部脂肪量と相関が認められたことは内臓脂肪量を反映する指標になる可能性がある。 また、今回の研究では通常診療下での有用性を検討するため、食後の随時採血であり、食後から採血までの時間も30分~4時間とばらつきがあったにもかかわらず、SCD-1(16)index は一定した値を示し、十分に経時的変化を評価することができた。対照的に、ひとつひとつの脂肪酸濃度(パルミチン酸など)や総脂肪酸濃度(24種の脂肪酸濃度の総和)は明らかに測定毎の変動が大きく、それらは血中中性脂肪濃度と強い相関があり、食事内容や食事から採血までの時間に影響を受けており、体内の定常的な代謝状態を評価するには不適切であるとわかった。 SCD-1(16)indexが2型糖尿病患者の内臓脂肪量の推定に役立つ可能性が示唆された。
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