研究課題/領域番号 |
25350857
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
鈴川 一宏 日本体育大学, 体育学部, 教授 (10307994)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 児童生徒 / 生活習慣 / 運動習慣 / SIgA / POMS / 防衛体力 |
研究概要 |
本研究の目的は、児童生徒を対象として調査を行い、運動習慣や生活習慣が体力および健康に及ぼす影響について検討し、運動・スポーツの必要性を明らかにすることである。この目的に沿って、平成25年度は福岡県のJ中学校・H高校に在籍する生徒を対象として、生活習慣の変化が防衛体力に及ぼす影響について検討を行った。なお、防衛体力の指標として局所免疫の一つである唾液中分泌型免疫グロブリンA(SIgA)とProfile of Mood States短縮版(POMS)のTotal Mood Disturbances (TMD)得点を用いた。また、生活習慣調査として自記式のアンケートを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ①防衛体力の評価として用いたTMDは、寝つきおよび寝起きが悪い生徒や主観的に疲労を感じている生徒、運動習慣がない生徒において得点が高く、心理的なストレスが高いことが明らかとなった。したがって、運動を習慣的に行いそして規則正しい生活習慣をすることによって精神的な疲労を軽減させることが明らかとなった。 ②防衛体力の評価として用いたSIgA濃度は、運動部活動に所属し運動習慣を持つ者で低値を示した。したがって、中高生が行う日々の部活動が身体的に過度な負担となり免疫力を低下させる可能性が窺えた。 以上、本研究の結果から心理的なストレスについては睡眠状況と運動習慣が関連していたことから、定期的な運動とより良い睡眠をとることが精神的な疲労を軽減させストレス解消に繋がることが考えられた。しかし、免疫の指標であるSIgA濃度は運動習慣を持つ者で低く、運動部活動を行う者は免疫力の低下が考えられた。つまり、中高生の防衛体力について考えた場合には、運動・スポーツは推奨されるものの、その運動が高強度、長時間な運動で慢性的な疲労に繋がらないように注意をする必要が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①防衛体力からみた児童生徒における運動・スポーツの必要性を明らかにするため、中学校および高等学校で調査を行った。学校現場では調査の協力を得ることができ、保健体育の時間を利用することによって対象者のアンケート調査、唾液採取、身体組成について効率よく調査および測定することができた。 ②調査項目として運動習慣および生活習慣について、自作したアンケートを用いると同時にPOMSによるアンケート調査、そして唾液中のSIgAを測定することによって生徒の防衛体力について検討を行うことができた。 ③調査結果から、心理的なストレスについては寝付きや寝起きといった睡眠状況と、運動習慣が関連しており、定期的な運動とより良い睡眠をとることが精神的な疲労を軽減させストレス解消に繋がることを明らかにすることができた。 ⑤免疫の指標であるSIgA濃度は運動習慣を持つ者で低く、運動部活動を行う者は免疫力の低下が考えられた。つまり、中高生の防衛体力について考えた場合には、部活動に所属している者は風邪をひきやすいなど、運動・スポーツが負の影響に働く可能性があることを明らかにすることができた。 ⑥平成25年度の結果から、児童生徒の防衛体力について考えた場合、運動部に所属し運動・スポーツをすることはストレス解消につながり良い影響となるが、一方で高強度長時間にわたる生体に過度な負担となる激しい運動は免疫系の低下に繋がり、強いては防衛体力の低下に繋がる危険性があることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果から児童生徒の防衛体力について考えた場合、運動部に所属し運動やスポーツを行うことはストレス解消につながり良い影響となるが、その一方で高強度長時間運動のように生体に過度な負担となる激しい運動は免疫能を低下させる可能性があり、防衛体力の低下に繋がる危険性があることが考えられた。そこで、今後の研究として平成26年度は以下について検討を行う。 ①平成25年度の結果をさらに分析するとともに、平成26年度では25年度行った学校について再度調査を行い、同一対象者の経時的な変化について検討する。これにより、例えば身体的特性に与える影響はもちろんのこと、行動体力、防衛体力についても運動による影響を経時的にその変化を追跡できるものと期待される。 ②防衛体力に及ぼす運動・スポーツの影響を明らかにするため、さらにいくつかの学校について調査を行う。データ数を増やすことにより、より信憑性の高い結果を導き出せるものと期待する。 ③学校現場で行われている運動能力テスト(新体力テスト)を行動体力の評価として用い、行動体力と防衛体力との関連について検討を行う。これにより、一言で「体力」と表すことが多い行動体力と防衛体力に関連があるのか。そして、運動やスポーツによって行動体力が向上することが防衛体力の向上に繋がるのか明らかにすることができ、今後の研究に活かす資料になると期待する。 以上のように、平成26年度についても平成25年度と同様に体組成測定、アンケート調査(生活習慣、運動習慣、健康状態に関する質問など)、防衛体力に関する調査(POMS、自覚症状調べ、唾液中SIgAの分析)を行うとともに、唾液中のアミラーゼによるストレスの評価、そして貧血の評価として血中ヘモグロビン値の測定を末梢血管モニタリング装置(アストリム;シスメックス社製)によって非侵襲的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年を通し計画的に調査を行ってきたが、消耗品等を購入する際、当初の見積と細かな違い(百円あるいは10円単位)が出てしまい、当初の使用額より430円を余らす結果となった。 平成25年度に余った430円を平成26年度に有効的に活用する。使用計画としては、調査等で使用する文具等の購入(消耗品)に充てる予定である。
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