研究課題/領域番号 |
25350860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡福祉大学 |
研究代表者 |
野坂 俊弥 静岡福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (90281253)
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研究分担者 |
宮田 浩二 文教大学, 人間科学部, 教授 (20348197)
水村 信二 明治大学, 文学部, 教授 (50267358)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウエルネス / 大動脈脈派速度 / PWV / 動脈伸展性 |
研究概要 |
ウエルネスという言葉は1980年代にわが国に導入され,その後発展的に広まり,現在では衆知の言葉としてすでに汎用化されている.しかしながら,ウエルネスに関する研究は,その言葉の知名度に比して,発展しているとは必ずしも言えない現状がある.そこで,日本人のウエルネスの程度を明らかにするための基礎的知見を得ることを目的に,日本語ではまだ公表されていないウエルネス指標を作成し,大学生のウエルネスの程度について明らかにするとともに,健康指標のひとつである大動脈脈派速度(PWV:Pulse Wave velocity)と日本語版ウエルネスインデックスとの関連性について明らかにすることが本プロジェクトの目的である。 また,今年度の目標は,本邦初のウエルネスの程度に関する成績を公表することと大学生のウエルネスの程度を評価することを目的に.米国で使用されているウエルネス指標( Wellness Index )の日本語訳を作成し,大学生を対象に回答を求め集計・検討を行うことであった。 まずはじめに,米国において汎用的に使用されているウエルネス指標について,それらの内容と信頼性および妥当性について検討を行った。検討の対象とした3つの質問紙(Wellness Index, TestWell, およびLifestyle Assessment Questionnaire)の中でも,われわれが使用予定のWellness Indexは内的整合性,信頼性(信頼性係数0.77),および妥当性の確認が諸家によりされていた。 そこで,Wellness Indexを日本語に訳し,福祉大学生37名を対象に回答を求めたところ,概ね良好な結果が得られた。しかし,設問数が多すぎる,あるいは回答が困難な設問が含まれているなど,いくつかの改良すべき課題も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」において,わが国におけるウエルネス研究に有用な指標の作成と健康指標としての大動脈伸展性との関連について検討することを目的に,われわれは3年間の研究機関とその期間内における3つの研究課題を設定した。それはすなわち,①Wellness Indexの日本語版の作成およびその利用性の検証 ②作成したウエルネスインデックス日本語版を,その信頼性を損なわない程度に縮小した短縮版の作成 ③作成したウエルネスインデックス短縮版により求めたウエルネスの程度と,動脈硬化の指標としての大動脈脈派速度との関連に関する検討 の3点であった。 そこで示した3つの研究課題のうち,1点目の課題は概ね達成できたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,前項に示すとおり概ね達成できたため,当初の研究計画通り次の段階に本研究プロジェクトを進行させる予定である。すなわち,昨年度作成したウエルネスインデックス日本語版を10問程度に短縮した質問紙を作成し作成しその利用性について検討を行う。具体的には以下の手順に従う。 まず,昨年度の本プロジェクトにおいて日本語に訳したウエルネスインデックスは,英語版のWellness Indexと同じく設問数が430問あり,回答に相当な時間を要するなど対象者の負担が大きく,また効率も悪い。そこで,項目間の相関係数および信頼性係数を基準に,尺度の信頼性が損なわれない程度に項目数を削減し,最終的に100問程度の「ウエルネスインデックス日本語短縮版」を作成する。その作成にあたっては研究組織内で協議の上,ウエルネスの背景を勘案した上で取捨選択し,必要に応じて文言を修正する。そこで作成した「ウエルネスインデックス日本語短縮版」を前年度と同様に質問紙調査に供する。 今年度は共同研究者が所属する3大学に対象者を拡大し,より高い妥当性を求める。それにより得た結果を質問紙尺度の検討に供する。すなわち,「ウエルネスインデックス日本語版」の結果を外部基準として「ウエルネスインデックス日本語短縮版」の妥当性について検討する。 また,昨年度の本プロジェクトにおいて回答者から指摘を受けた回答が困難な設問についても検討を行う。そのためには,国内外の研究者と議論を継続し,そのような設問の削除や修正を含めた内容の変更について検討する。それにより,わが国のウエルネスに関する事情に適したウエルネス指標が完成することが期待でき,今後のウエルネスの研究や実践活動に大いに寄与することが期待できるだろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の事業は,研究代表者である野坂俊弥(静岡福祉大学)と共同研究者の水村信二(明治大学)が中心になって取り組んだ。それは,当該年度の作業内容が,主として欧文で書かれているWellness Indexの邦訳をすることと,サンプルを大学生に回答させる程での課題点の抽出であったことが影響している。共同研究者である宮田浩二にも,157,000円の配分を行ったが,次項に示すとおり,宮田は質問紙の作成過程において主体的に取り組む予定にしている。 当初の予定では宮田にも当該年度の作業を行う予定ではあったが,宮田は所属大学において学科長に任命されるという予期せぬ人事の変更が発生した。そのような予期せぬ人事異動により,当該年度の宮田の本研究事業への参加が著しく制約を受けたため,やむを得ず彼に配分した同額の経費を次年度に使用する必要が生じた。 共同研究者の一人である宮田浩二の専門領域は運動心理学であり,彼の本研究プロジェクトにおける役割のうち主たるもののひとつは,作成したウエルネス質問紙の信頼性と妥当性の検討である。また,400問を超えるウエルネスインデックス日本語版を,その信頼性を維持したまま100問程度のウエルネスインデックス短縮版を作成する過程において,その信頼性を損なわない作業において主体的に本研究課題に取り組む必要がある。 また,任命された所属大学における学科長の職務も軌道に乗りつつあるため,次年度は本研究プロジェクトにおいて中心的に活躍することが期待されている。研究の概要で述べたとおり,平成26年度は邦訳したウエルネスインデックス日本語短縮版を完成させ,大学生のウエルネスの程度を明らかにし,それを汎用化させることが求められている。その作業過程において共同研究者の宮田を通じて次年度にその経費を使用する計画である。
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