高齢期は,退職や親しい者との死別などのストレスに加え,自らの老いや病とも調和していかなければならない。これらにうまく対処し,心身の健康や生活の質を高く保つために大きな役割を果たすと考えられるのが,ストレス対処能力(Sense of coherence: SOC)である。本研究課題では,地域在住高齢者を対象としたコホート(太宰府研究・篠栗研究)においてSOCの実態を明らかにするとともに,SOCと認知機能との関連について検討することを目的とした。平成25年度には,篠栗コホートにおいて2年後のフォローアップ調査を実施し,データベースを構築した。平成26年度には横断的解析を実施しSOCの実態について検討した。最終年度は,縦断データを用いて検討を行なった。まずは太宰府コホートにおいて,SOCの変化について検討を行なった。その結果,ベースラインと2年後の平均値には有意な変化は認められず,保持されていることが示唆された。一方,認知機能のスコアは,フォローアップ時に有意な上昇が観察された。そこで2年後の認知機能スコアとSOCの関係について検討したが有意な関連は認められなかった。本研究ではフォローアップ時に認知機能の改善が示唆されたことから,フォローアップ調査に参加した対象と脱落した対象の特性についても付加的に検討を行った。その結果,途中脱落群では認知機能や心身機能が虚弱な傾向にあり,本研究の解析対象は比較的健康度の高い対象である可能性が示唆された。認知機能の変化およびSOCとの関連については篠栗コホートにおいても検討を続けており,これらを踏まえ総括を行なう。
|