研究課題/領域番号 |
25350863
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
吉中 康子 京都学園大学, 経営学部, 教授 (80166983)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつリスク把握 / 二次予防事業者の把握 / うつ予防運動プログラム / 元気アップ市民サポーター養成事業 / 身体活動量の改善 / 老年期うつ尺度 / 生活状況調査 / TMTテスト |
研究概要 |
平成23年7月29日―8月9日の期間、亀岡市民で65歳以上の高齢者は19424人、要介護3以上を省いた18231人を対象に国が示した89設問と亀岡市独自の15設問の日常生活圏域ニーズ調査を実施し(回答率:72.2%)、有効回答数は13,159人であった。 この圏域ニーズ調査の結果、求められる事業のTOP3は全地域で運動器の機能向上、口腔の機能向上、認知症の予防であり、求められる社会参加は世代間交流であった。二次予防事業対象者に絞ると、転倒リスクは50.5%、閉じこもりリスクが17.0%、口腔機能リスクが62.9%、物忘れリスクが52.9%、うつリスクが48.5%の結果となった。 この中から、地区別に介護予防実証事業への参加者を募集し、週1回計14回の連続講座の「教室型」と、各講座3回と、自宅での自主運動に取り組む「自宅型」を前・後期の2回展開し、前後に身心機能測定と生活状況調査をした。また、この運動介入と平行して、介護予防運動プログラムの確定、元気アップAGEサポーター養成事業を実施した。1期生は南丹保健所が養成した南丹元気づくり体操普及リーダー(200名)と(公財)健康体力づくり事業財団が養成した健康運動指導士及び健康運動実践指導者(亀岡市在住48名)と8年間継続実施している京都学園大学の早朝健康体操教室参加者(35名)に案内し、受講生は42名であった。その後、3回の養成事業で、総計101名のサポーター養成を行った。運動介入の前期は12教室292名の市民に対して介護予防の運動介入のアプローチができた。AGEサポーターは12教室(教室型7クラス、自宅型3クラス)に延べ400名が参加・支援した。後期は9教室218名(教室型6クラス、自宅型3クラス)の市民に対し、サポーターは延べ261名の参加・支援であった。現在、データ分析し、うつ傾向の高齢者向け改善プログラムを制作中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
京都府が地域包括ケア推進機構を立ち上げ、亀岡市の高齢福祉課の全面協力と吉中が15年前から実践する『かめおか体操祭』、10年前から立ち上げた異世代交流の試みと、社会教育団体のネットワークである『かめおか遊友ネットワーク』の実践的な積み上げがあり、地域全体にソーシャルキャピタルの再構築がされつつある。 このような経過の延長に今回の研究がスタートしたために、参加者が予定数確保できた。私たちは地域包括ケアシステムの構築を目指した介護予防事業として、これまでの運動プログラムを核としながら、口腔ケア、栄養・食生活改善のプログラムを盛り込んだ、総合的な介護予防プログラムを模索し、介入、評価しエビデンスを出すことに成功した。 教室型、自宅型とも、木村みさか・山田陽介は指導・運営に関わった。本テーマ実施にあたり、行政や自治会との調整も進み、研究は順調に進んでいる。参加者の活動量アップと筋萎縮の予防・改善を促す運動を強化することで、その効果は体力測定による運動機能の改善、さらに口腔ケアの意識、栄養・食生活の意識にも改善がみられた。京都式総合型プログラムの展開は、住民が相互に支えあうという、地域資源としての“人”を活用することで、健康づくり事業が地域の活性化に結びつくことを目指し、平成25年3月にNPO法人元気アップAGEプロジェクトを設立、71名(市民サポーター61名、研究者10名)が今後の研究をサポートできる体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
うつリスクの把握後に、専門的な介入をし、運動の効果を今後検討していくが、研究が終了したのちも、地域での継続フォローが必要であると考えている。昨年の地域介入研究は京都府・亀岡市・京都府立医科大学・京都学園大学・京都大学・同志社大学・立命館大学などの研究者の協力も得ながら進んでおり、『京都式介護予防プログラム構築事業』は平成23年から始まって終了した。その成果は京都府下全域の市町村にも報告会をし、マニュアル化し、公表できている。また、我々は『NPO法人元気アップAGEプロジェクト』を立ち上げることができ、市民による介護サポーターを中心に現在、研究対象の10町で14の『元気アップ体操教室』を有料で開催することができた。 補助金がなくとも、この研究のフォローが経年的にできる準備が整い、医療費、介護給付費の客観的数値データを用いた介護保険サービスの基盤整備の取り組みは、国レベルにおいても医療費のレセプトデータを用いた分析の必要性が検討されており、大学との連携でレセプト分析が始まりつつある。 このように市民サポーターの養成と活用の場を増やすことで、地域を活性化し、元気な高齢者がうつ傾向リスクのある高齢者を支える仕組みとなるよう、今後も医療関係者ともネットワークを組んで進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年~25年度は他の研究者や亀岡市の委託で現場を回し、地域で展開してきた運動プログラムを身体活動量アップと筋量維持増加という視点で見直し、さらに、うつと身体不活動との関連などを理解してもらえる健康教育の内容やその展開方法、高齢者の生活にフィードバックできる運動指導内容等を検討した。 このために研究費を本年度に回して、今年は本格的にうつの介入研究に取り組む。 うつの介入研究は、今後虚弱高齢者も対象としたいため軽費老人ホームでの介入を増やし、これまでに把握した一般高齢者や2時予防者などに対する教室型と訪問型で行う。これを補助するスタッフ(学生やNPO法人のサポーター)の謝礼、および調査・測定補助者への謝金等にあてる。また、これまでに入力補助やフィードバックに、かなりの人件費が必要であったので、パナソニックの協力を得て、データとフィードバックのICT化をはかりたい。他は、研究打ち合わせのための旅費、成果発表のための旅費(国内学会6回、海外学会1回)および論文投稿、マニュアル、DVDの制作費。SPSSのバージョンアップ経費とする。
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