研究課題
【目的】糖尿病網膜症に対する食事療法は、確立されていない。2型糖尿病モデル動物(dbマウス)を用いた検討で、低蛋白高炭水化物食の方が高蛋白低炭水化物食より、腎機能だけではなく糖代謝に対しても改善効果があることを示した。また、対照マウスにおいて、同条件で、腎機能低下・RAS系遺伝子発現を抑制することを報告した。本研究の目的は、食事蛋白質量の変化に伴う網膜への影響についての解析を行い、蛋白質制限食の意義を明らかにすることである。【方法】4週齢雄性2型糖尿病マウス(db群)と対照マウス(C群)を購入し、蛋白質エネルギー比率別(12%:L食群,24%:H食群)の異なる食事にて飼育した。C群・db-L群は自由摂食、db-H群は db-L群の摂食量に揃えるペアーフェッド条件下(同エネルギー量・同脂質量)で6週間飼育した。報告した実験よりHbA1cの差がない状態で検討するために実験期間を6週間に設定した。6週後に、麻酔下にて、眼球を摘出、網膜を剥離した。網膜からRNA抽出後cDNAを調製した。レニン、アンギオテンシノーゲン(Agt)、アンギオテンシン転換酵素遺伝子(Ace)について、リアルタイムPCR法にて発現を評価した。【結果】db群において、血糖値・HbA1cには差が認められなかったが、腎臓重量・血中インスリン値は、db-L群はdb-H群より有意に低値を示した。蛍光眼底造影検査、光干渉断層計(OCT)検査においては、差が認められなかった。Agtは、db-L群でdb-H群よりも発現が有意に高かった。Aceは、db群がC群に比べて発現が高い傾向であり、また、db-L群がdb-H群よりも発現が低い傾向が認められた。【考察】エネルギー・脂質摂取量を揃えた条件下では、食事蛋白質量が腎機能だけではなく網膜RAS遺伝子発現に影響を及ぼすことが示された。本研究の結果では、このことがどのような病態生理的な意義があるのかは不明であり、さらなる検討が必要と考えられる。
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Eurropean Journal of Nutrition
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00394-015-1075-y
日本衛生学会誌
巻: 70 ページ: 110-114