研究課題/領域番号 |
25350881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
川田 茂雄 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 再生再建医学研究部, 研究員 (20376601)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高気圧高酸素 / 骨 / 石灰化 |
研究概要 |
本研究は、組織酸素分圧の増加が骨の石灰化促進、および骨折治癒促進を引き起こすかどうかを検討することを目的としている。研究初年度は、組織酸素分圧増加が骨の石灰化を促進するかどうかを実験動物のマウスを用いて生体内で確認した。骨の石灰化速度の測定は、生体内カルシウムを蛍光カルシウムキレート剤であるカルセインで標識することにより行った。組織酸素分圧の増加は、マウスを2絶対気圧、90%酸素環境下の特殊チャンバーに置くことにより実現させた。高気圧高酸素暴露は1回あたり90分間で週5回の頻度で1週間行った。 その結果、腰椎、大腿骨ともに骨の石灰化速度が高まることが分かった。 生化学的解析を行うために、腰椎からmRNAを抽出し、1型コラーゲンα1鎖とアルカリフォスファターゼ(ALP)のmRNA発現量を検討したところ、どちらも高気圧高酸素環境暴露により有意に増加していた。先行研究では、骨芽細胞を高気圧環境下で培養すると、コラーゲン発現量が増加することが報告されており、我々の今回の生体内での実験でも、同様の現象が起こった可能性がある。また、骨の石灰化には、ALPによるピロリン酸からのリン酸の遊離が必須であるが、ALP活性はin vitroの研究で高酸素環境下で増加することが知られている。我々の研究でもALPのmRNA発現量が高気圧高酸素環境下で増加したことから、今回のin vivoの結果はこれらの因子が関与したのではないかと考えられる。骨面積あたりの骨芽細胞数は高気圧高酸素環境下では通常飼育のマウスと比べ増加しなかったが、高気圧高酸素環境下で骨面積が増加しているため、絶対数では高気圧高酸素環境下では増加していると考えられる。この結果もin vitroの先行研究と一致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
石灰化速度の解析は、成長期の若い(5週齢)のマウスを用いたということもあり、蛍光カルシウムキレート剤のカルセインの投与間隔を120時間に設定しても高い精度で測定できた。また、生体内酸素分圧の増加も、特殊設計したチャンバーを用いたことにより、気圧も2絶対気圧まで設定できたため、石灰化を促進するのに充分な生体内酸素分圧増加を実現できたものと考えられる。 ただし、全体としては、研究代表者の職場異動もあり、研究の進捗に若干の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
骨の生化学的解析は技術的に問題なく行えたことから、本年度はマウスの骨折モデルを用いて、どの程度の高気圧高酸素環境が骨折治癒に最も有効なのか、高気圧高酸素暴露の1回あたりの時間、頻度、期間等を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、所属していた機関での任用期限が年度途中で終了したため、就職活動、異動等が重なり研究の進捗が遅れた。 本年度は、生化学的解析を行うための抗体、酵素、一般試薬等を購入する。また、積極的に外部の意見を取り入れるために、学会等に参加する。現在、冷蔵庫の容量がいっぱいのため、新たに購入する。一部、小型実験機器に不具合が出たので、新たに購入する。
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