研究課題/領域番号 |
25350882
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
我妻 玲 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 学術支援専門職員 (00347121)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 筋萎縮 / 筋衛星細胞 / 栄養飢餓 |
研究概要 |
筋萎縮条件下における筋衛星細胞の機能制御機構については不明な点が多い。本研究では、In vitro筋管細胞萎縮モデルを用いて、筋衛星細胞の機能制御機構の解明を目指している。マウス筋芽細胞株C2C12を分化条件で培養すると、細胞は多核の筋管細胞へと分化する細胞と分化せずに単核の筋芽細胞のままで留まる“リザーブ細胞”の2つのサブポピュレーションに分かれる。リザーブ細胞は休眠状態の筋衛星細胞のモデルとして利用されている。平成25年度は、In vitro筋管細胞萎縮モデルとリザーブ細胞の単離精製方法の確立、リザーブ細胞の形態について検討した。筋管細胞の萎縮は、分化培地をマグネシウムとカルシウムを含むリン酸緩衝生理食塩水に交換することによって誘導した。この栄養飢餓ストレスによって筋管細胞の萎縮、筋管細胞と単核細胞死が観察された。さらに同一筋管細胞を経時的に観察し、筋管細胞の萎縮度を計測した。1時間後にはすでに3%程度の萎縮が観察され、3時間後には15%、6時間後には28%、12時間後には60%、24時間後には74%、48時間後には80%と著しい筋管細胞の萎縮が観察された。次に、リザーブ細胞を増殖培地で24-72時間培養した時の形態を観察した。24時間分化培地で培養されていたリザーブ細胞は、ディッシュ表面によく伸展接着しており、細胞増殖期にあるC2C12筋芽細胞によく似た線維芽細胞様の形態をしていた。一方、48時間栄養飢餓ストレスに曝されたリザーブ細胞は、24時間分化培地で培養した後でも小さく丸い形態をしていることが多く、伸展接着している細胞は非常に少なかった。しかしながら、72時間後には線維芽細胞様の形態を示し、増殖するようになった。これらの結果は、栄養飢餓ストレスに曝されたリザーブ細胞は血清による増殖刺激に対しての初期反応性に乏しいものの、その細胞機能は維持されている可能性を示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リザーブ細胞の単離精製は先行研究の方法に従って行ったが、栄養飢餓ストレスに曝された筋管細胞は非常に剥がれにくく、また作業中にリザーブ細胞を失うことも多く、純度および細胞収量共に低かった。そこで先行研究の方法を参考にして新たにリザーブ細胞を単離精製する方法を確立することに時間がかかってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度で、In vitro筋管細胞萎縮モデルとリザーブ細胞の単離精製方法を確立できたので、平成26年度では、リザーブ細胞の増殖および分化能力について検討する。増殖能力はDNA 複製や細胞増殖などで細胞内に取り込まれるチミジンのアナログであるブロモデオキシウリジンを使って免疫組織化学的に検討する。また、分化能力は分化マーカーであるミオシン重鎖の発現レベルを指標に免疫組織化学的に検討する。当初の計画では、細胞の増殖・分化に関与する因子をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析する予定であったが、解析する因子をいくつかに絞ってRT-PCRによって検討したいと考えている。そして、平成25年度の研究で明らかになった栄養飢餓に曝されたリザーブ細胞の形態について、細胞骨格タンパク質の細胞内の局在変化等から検討したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はほぼ交付申請額通りの金額を使用したものの,44,899円を繰り越した。差額については物品の購入等はせず,基金化されたことのメリットを活かして平成25年度に活用することにした。 超純水製造装置のカートリッジのメンテナンス時期が迫っているためその費用に当てる。
|