研究課題/領域番号 |
25350883
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坪井 宏仁 金沢大学, 薬学系, 准教授 (20319338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抑うつ / 社会的サポート / 社会経済的要因 / 地域高齢者 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模疫学データを用いて、新しい側面からの抑うつの予防策を発見することである。当初は健診データを用いて、メタボリックシンドローム(内臓脂肪により全身の炎症性指標が高値と考えられる)と抑うつの関連性を確認する予定であったが、解析途中で新たな発見があったため、平成26年度はデータ解析の焦点を変更し、社会的サポートと社会経済的要因(socio-economic status: SES)の抑うつとの関連性を解析した。 愛知老年学的評価研究の2006年データ(65歳以上高齢者、男性13,860名,女性14,966名)を横断的に線形回帰分析した。抑うつ度にはGeriatric Depression Scaleを用い、抑うつのバッファー候補である社会的サポートは4側面(情緒的サポート・手段的サポートを各々受けるまたは与える)に分類し、年齢・等価所得・教育年数を調整変数として、婚姻状態別(既婚・配偶者と死別1年未満・配偶者と死別1年以上)・性別に解析した。 配偶者を亡くし1年未満の層を除き、いずれの層においても、一般的に好ましとされるSES(等価所得が高く、教育年数が長い)が抑うつ度と有意に負の関係があることが判明した。社会的サポートにおいては、婚姻者において子供から情緒的サポートを受けることが、抑うつ度と正の関係にあった。興味深い発見は、家族外とのサポートに関する因子で、手段的サポート・情緒的サポートともに、与えることが抑うつ度と負の関係を示した。以上、男女ともに同様の結果であった。 日本では、従来は抑うつと関係がないとされていたSESが、大規模データを用いた結果、英米と同様の結果となった。子供から受ける情緒的サポートの悪影響に関しては、世代間葛藤のためという先行研究が多い。また、家族外とのサポートの授受では、受けることではなく与えることが抑うつのバッファーとなる可能性が示された。以上が新たな発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的とは異なる興味深い発見が新たにあったため、研究の目的を追加したため。また、個人的事情として、平成24年度は健康を害し入院および療養が必要であったため、全般的に作業が遅れた。 当初の目的を遂行するための健康診断データの借用が実現できていない。本研究とは異なる研究グループにおいて健康診断データの借用のために市町村とのミーティングを持つ予定であったが、進行していないためである。 しかしながら、上述のような新たな発見が導かれ、その結果は、すでに論文化し、国際誌に投稿済みである。
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今後の研究の推進方策 |
2009年および2013年のデータも同様の解析を横断的に行い、今回の結果の再現性を検討し、いずれの結果も国際誌に投稿する。また、2006年、2009年および2013年を同一コホートで縦断的に解析し、よりエビデンスの高い結果を得る。 一方、健康診断データの借用を進めて、倫理委員会を通し、自治体に依頼をする手はずを整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述した個人的事情で使用が少なかったこと、英文校正費用および統計ソフト(SAS)継続使用費用が次年度に不足しないように、一部を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文作成に当たっての英文校正費用、ミーティングや学会発表などの交通費、統計ソフト(SAS)継続使用費用、必要書籍の購入などに用いる。
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