研究課題
本研究では、食生活やライフスタイルがmRNA品質管理機構(NMD機構)およびナンセンス型mRNA発現量に与える影響を明らかにし、生活習慣病の新しい発症・予防機構を解明する研究基盤を構築することを目的とした。平成25年度の研究で、高脂肪食(とくに高カカオバター食)による6週間の飼育がマウス肝臓において、ナンセンス型mRNA発現量を増加させることを明らかにした。一方、運動負荷は骨格筋におけるナンセンス型mRNA発現量に有意に影響しなかった。平成26年度の研究で、食事制限および絶食(48時間)は肝臓のナンセンス型mRNA発現量に有意な影響を与えなかった。NMDの機能制御に関わるとされる細胞内ストレス応答因子eIF2αのリン酸化は、高脂肪食投与、食事制限、絶食のいずれにおいてもマウス肝臓で増加した。一方、NMD因子UPF1の発現量は食餌内容によって影響されなかった。細胞内のエネルギーセンサーAMPKの活性(リン酸化)の程度は高脂肪食給餌で大きく変化しなかった。一方、脂肪合成酵素SCD1の発現量は、高脂肪食の給餌で低下した。Renillaルシフェラーゼの発現に基づく外来性NMDレポーター遺伝子を用いて、SCD1阻害剤(A939572)のNMD機構への影響を解析した結果、SCD1の阻害はNMD機構に有意に影響しないことがわかった。平成27年度の研究で、高脂肪食投与あるいは食事制限/絶食はマウス肝臓における小胞体(ストレス)タンパク質の発現を大きく変化させなかった。さらに、活性型eIF2αの発現プラスミドを作成し、培養細胞へ遺伝子導入したところ、ナンセンス型mRNA発現量に有意な変化はみられなかった。以上、本研究では、高脂肪食(高カカオバター食)がナンセンス型mRNA発現量を増加させることを見出し、その作用はeIF2α、AMPK、UPF1やSCD1に非依存的であることを明らかにした。
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Cell Stress Chaperones
巻: 21 ページ: 29-40
10.1007/s12192-015-0633-9