研究概要 |
骨格筋の損傷修復・再生過程は骨格筋幹細胞である筋衛星細胞,炎症細胞である好中球やマクロファージ,これら細胞から分泌されるサイトカインやケモカインなど多種の細胞や液性因子が筋損傷部位において統合的協調的に関与した事象であるが,その全容はいまだ明らかではない.本研究では,骨格筋損傷に伴う炎症応答および損傷筋の修復再生過程における免疫制御受容体の機能および制御機構について検討することを目的とし,平成25年度は以下の実験を行った. 1.マウス下腿三頭筋へ蛇毒Cardiotoxin(CTx)を投与し筋損傷を誘導したマウス骨格筋損傷モデルを用い,B6野生型マウスと抑制型および活性化型免疫制御受容体欠損マウス(PirB欠損,DAP12欠損,FcRγ欠損,DAP12/FcRγダブル欠損)との比較実験を行い,骨格筋の損傷修復・再生過程への免疫制御受容体の関与についてin vivoにおいて検証した.その結果,DAP12欠損およびDAP12/FcRγダブル欠損マウスにおいて損傷筋の修復再生遅延が観察された. 2.骨格筋損傷時に損傷筋への浸潤細胞を把握するため,実験1の系を用いて再生遅延の観察された活性化受容体欠損マウスよりCTx投与後1, 4, 7, 14日後の損傷筋に局在する細胞を回収しFACS解析を行った. その結果,好中球の浸潤に変化は見られなかったものの損傷筋に局在するマクロファージの分化状態に変化が認められた.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していた免疫制御受容体群の遺伝子発現およびタンパク発現の解析を,その他の実験の進捗状況と実験効率化のため平成26年度に予定している液性因子同定の解析と同時に行うこととしたために,qPCRによる遺伝子発現解析やFACS解析,ウェスタンブロットに必要な試薬,抗体,消耗品等の費用が次年度に繰り越されたことが主な理由である. 本研究課題を遂行するため平成26年度に予定している研究計画についての研究費は,平成25年度の繰越金385,264円に平成26年度1,400,000円の計1,785,264円である.その内訳は物品費1,485,264円(主に抗体,試薬,プラスチック消耗品,実験動物の購入費等),旅費250,000円(国内学会旅費および参加費等),人件費・謝金 50,000円を予定している.
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